『カップルズep』ジャケット未発表写真裏面と小西康陽コメント
★昨年の夏にリリースされたピチカート・ファイヴのリマスター盤CD、そしてアナログLPの復刻が思いがけず好評を戴き、そのご褒美のつもりで、今度は7インチのシングル盤のリリースを、とお願いしたところから、今回の『エース』というコンピレーションの企画がスタートしました。
★そんなわけで、『カップルズep』と『ベリッシマep』は誰よりも自分が待ち望んでいたレコードです。なにしろかつてのソニー時代はアルバムからのシングル・カットというのがありませんでしたから。
★曲はクラブでかけたい曲をA面に。そしてジャケットはオリジナル・アルバムがそのまま小さくなったものが良い、と考えたのですが、『カップルズ』の裏ジャケを眺めていたら、そういえばこの桑本正士さん撮影の写真、何か別のカットがあるはず、と閃いたのでした。さっそく『カップルズ』のジャケット・デザイナーである田淵稔さん経由で桑本さんにお尋ねしてみると、当時のフォトセッションの写真をひとまとめに送って下さいました。
★あらためて写真を眺めてみて、さまざまな感慨が沸き起こりました。その後の、とりわけ野宮真貴さんが加入して以降のピチカート・ファイヴのイメージとは全く異なる、むしろカレッジフォークのグループのようなルックは、このバンドのそもそもの姿を見事に写し取っている、と思いました。まったく桑本さんには脱帽、のひとことでした。
★ところが、ソニーのデザイナー林田さんより、桑本さん撮影の別カットを使ったデザイン・ラフが届いて、この未発表写真こそは今回のアナログ7インチ・リリースの最大のセールスポイントだ! などと盛り上がっていた直後、あろうことか桑本さんの訃報を聞くことになってしまいました。
★くり返しになってしまいますが、『カップルズep』の裏ジャケの未発表写真、ぜひ一度観ていただきたいのです。ピチカート・ファイヴってこういうバンドだったのか、と、以前とは異なる印象を抱く方もいるのでは。うわー若い、とか、痩せてた、とか、そんなことで笑ってくださるのでも構いませんので。そして桑本正士さんという写真家の名前をあらためて記憶してほしいのです。
★さて。ちなみに、7インチ・アナログの中央の穴は小さいもの。レーベルのデザインは旧・CBSソニーのごく初期のリリース作品、アダムスの「旧約聖書」とザ・ゾンビーズの「ふたりのシーズン」の2枚のシングル盤からデザインをトレースしました。
★この7インチが好評だと、皆さんお待ちかねのあの曲、あるいはあの人の作品もアナログ化が進むのではないかと。それでは皆さま、コンピレーションCD『エース』共々、どうぞよろしくお願い致します。 小西康陽