『DANCE』と『LIVE FULL HOUSE MATINEE』は、31年前の1989年に制作・収録したものです。
四人囃子の全作品のリイシューへ向けて進めている作業は、主に音質を中心に現代仕様への化粧直しを施す事です。ほんの少し前とは言い難い過去の作品達ですが、限られた範疇での作業ではありつつ、概ね2021年にその持ち味が蘇る施しが出来ていると思います。これは偏に各レーベルの方々が【四人囃子】作品の存在を、意味あるものとして認めて下さった事によって実現していると思っています。
“プログレッシブロック”という言葉は ’74年のデビュー時においては自分達の志向性を表すにあたり、とても有難い称号として添えられたかもしれません。それが後に様式の名称として定着すると、自分達には厄介な言葉に変わりました。
四人囃子は一貫してスピリットとして”プログレッシブ志向”で有り続けたと考えています。
少なからずとも、その都度プロトタイプとなるべく何かしらの活動を貫いたと思います。
もはや自分達の作品に対しても、いち音楽ファンとして客観的に捉えるようになっている今、それぞれ一つ一つの作品の有り様は現在のリスナー感覚で聴き直せています。
このほどの『Dance in Matinee』は 冒頭にあげた31年前のスタジオ作業とライヴパフォーマンスによる2作品を合わせたものですが、時代によっての味わいは変わり続ける中で、聴きごたえは今もって持続していると自負しています。
1989年はベルリンの壁が崩壊し、「ソビエト連邦」が崩壊縮小し「ロシア」へ名を戻し、北京では天安門事件が起きた年です。また昭和は1週間だけの平成元年の年です。
バブル経済が終焉する時期の音楽制作の現場状況は、今に続くデジタル機材の便利・合理性が定着しスタートした時期とも言えます。
31年前のちょっとした時代の申し子が、現在の価値感を形成するコラージュアイテムのひとつになってくれたなら、それも幸せだなと思います。
岡井大二