ピアノと唄だけの“一発録”レコーディング
極度に緊迫した空間で矢野顕子の一挙手一投足を余すところなく捉えた、
音楽史に残る伝説のドキュメンタリー・フィルム。
現代技術でレストア&リマスタリングされ、四半世紀の時を経て、期間限定劇場上映。
1992年/日本/モノクロ/2ch/DCP/79分
ピアノと唄だけの“一発録”レコーディング
極度に緊迫した空間で矢野顕子の一挙手一投足を余すところなく捉えた、
音楽史に残る伝説のドキュメンタリー・フィルム。
現代技術でレストア&リマスタリングされ、四半世紀の時を経て、期間限定劇場上映。
1992年/日本/モノクロ/2ch/DCP/79分
1992年、矢野顕子が新たなチャレンジとして選んだのが、生演奏をノーカットで録音した『SUPER FOLK SONG』だった。観客のいないホールでグランドピアノに向かい、新旧の名曲を歌う彼女を捉えた名盤だ。その制作過程にカメラが入り、容赦なく素顔の彼女を追いかけた。それが、スーパー・ドキュメンタリー・フィルム『SUPER FOLK SONG』だ。24年ぶりにデジタル・リマスターされ公開される映像と音像は、生々しいまでに当時を蘇らせている。
『SUPER FOLK SONG』の制作は、‘92年2月、東京・千駄ヶ谷の津田ホールと、長野県松本市のザ・ハーモニーホールで行われた。真冬の松本でもノイズが入るからと空調を切り、お湯で手を温め白い息を吐きながらの録音・収録だったそうだ。
1976年のソロ・デビュー以来、リトル・フィートにイエロー・マジック・オーケストラ、パット・メセニーなど 国内外の一流ミュージシャンと演奏し高い評価を得ていた彼女が、すっぴんのような作品を作ったのは何故だったのだろう。振り返って矢野が言う。
「弾き語りで(アルバムを)出したのは、これが初めてじゃないかな。今はピアノだけの矢野顕子の作品は、ある程度の評価があるでしょ?でもそういうことになる前だったので。おそらくこれで、できた」
ライブでは一人でピアノの弾き語りをやる”出前コンサート”もやっていたけれど、レコーディングは違う。
「陶芸家が土を練って、窯で焼いて、出して、”ダメだ、ガチャーン!”みたいなのことしてるのがレコーディング。その中で一番いいものをお出しするのがライブであって。”ダメだ、ガチャーン!”は自分のためだから」
その”ダメだ、ガチャーン!”をカメラは冷静に捉えていく。苛ついたり落ち込んだり、試行錯誤を繰り返し、最後に笑顔を浮かべる。レコーディング・エンジニアの吉野金次は彼女のペースに合わせて忍耐強くテープを回し、マネージャーは優しく言葉をかけて彼女の緊張をほぐす。その姿もカメラは逃さない。
「私の音楽が生まれる場を、本来はひとに見せるべきではないというか、見せることが頭の中にないから。それを撮るのは監督の坂西伊作の仕事。私は自分の音楽を作ることをするだけ。だから彼らのためにサービスすることは一切やっていない。でも彼は、それを撮りたかったって。あの時代の、若さであり、力であり。それをパッケージとして、フィルムに収めたことが、素晴らしいですね。だって、二度と撮れないもん。見てる人も一緒に、”あ〜”とか”できた!”とか、一緒に楽しんでもらえるかしら。面白いよ!って言える。ものを作るひとだったら、共感してくれるところは、多々あるんじゃないかな」
今ならもっとリラックスしている、と笑う彼女だが、作品に向かう厳しさは変わらない。凛としたアーティストの姿勢が見える、貴重な映像作品だ。
(今井智子)
出演・演奏
矢野顕子
インタビュー出演
鈴木慶―
谷川俊太郎
糸井重里
三浦光紀
宮沢和史
David Rubinson
(出演順)
監督 坂西伊作
撮影 夏野大介
録音 舟播和之/森 英司
編集 平田孝聡/中溝哲生/井村文子/長谷清美
撮影アシスタント 角井孝博
セカンド撮影アシスタント 田口貴彦/加藤洋子
助監督 滝本登鯉
テレシネ 鵜飼悦郎
MA 番匠康雄
レコーディングエンジニア 吉野金次
アシスタントエンジニア 佐藤晴彦/中島秀一
モニターエンジニア 新居章夫/石黒 昭
ピアノチューニング 小林禄幸
ステージマネージャー 笹川章光/小俣佳久
A&R 名村 武
アーティストマネージメント 永田 純
制作 (株)ソニー・ミュージックエンタテインメント
*上記は、すべて92年当時のクレジットになります。
企画・主催 ソニー・ミュージックアーティスツ
サウンド・アドバイザー 吉野金次/ 篠崎恵子
宣伝 スキップ
協力 IMAGICA/スピードスターレコーズ/Sony Music Labels
配給 ライブ・ビューイング・ジャパン
配給協力 ソニー・ミュージックダイレクト