■現代クラシック・ピアノ界の鬼才(奇才)と称される、ロシアのピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフのソニー・クラシカル第3弾は、第17番「テンペスト」をはじめとするベートーヴェンのピアノ・ソナタ集。今年70歳をむかえたアファナシエフが特別な記念の年にリリースするべく選んだ3曲が収録されています。 ■ソ連の英才教育システムの中でヤーコフ・ザークとエミール・ギレリスという二大巨匠に師事し、ロシア・ピアニズムの伝統を受け継ぎつつ、独自の個性を発揮してきたピアニストであるのみならず、小説家・文学者・詩人としての顔も併せ持つアファナシエフが、シェイクスピアの同名の戯曲との関連を指摘される「テンペスト」ソナタを重要視するのも自然なことといえるでしょう。この曲に関しては既に2005年10月のサントリーホールにおけるライヴ録音が発売されていますが、その解釈に満足できず、12年を経ての今回の再録音となりました。ベートーヴェンのソナタ創作の出発点となった第1番、第2楽章に深く沈潜する長大なアダージョを持つ第7番の2曲はアファナシエフにとって初録音です。
■ピアノ界きっての個性派アファナシエフが、ソニー・クラシカルでの録音を熱望し、大きな話題となったレーベル移籍第1弾の「三大ソナタ」同様、ベートーヴェン作品への思い入れは深く、これまでも後期三大ソナタを何度も取り上げてきています(録音も複数リリース済み)。ベートーヴェンのソナタはロシアきっての名ピアニストにしてアファンシエフの師であるエミール・ギレリス(1916.10.19~1985.10.14)が得意としたレパートリーでもあり、昨年生誕100年を迎えた師への思いがこもったレコーディングでもあります。