REPORT
全国14都市映画館/一日限定プレミアム上映会
『TMN final live LAST GROOVE 1994』レポート
2019年4月21日(日)@TOHOシネマズ新宿
「4月21日」はFANKS(TMファン呼称)にとって「特別な日」だ。’84年4月21日、小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登による黄金ユニット、TM NETWORKがデビューしたのがちょうど35年前。そして’94年4月21日、人気絶頂のなか音楽活動の中止「TMN終了」を告げてからちょうど25年前。あれから四半世紀、’19年4月21日。散らばっていたFANKSが全国14都市34映画館に集結した。その数は約8000人。お目当ては「TMN終了」となった’94年5月18日・19日、東京ドーム公演『TMN 4001 DAYS GROOVE』を映像化した『TMN final live LAST GROOVE 5.18 』『TMN final live LAST GROOVE 5.19』のスクリーン上映による追体験だ。TOHOシネマズ新宿のなかで最大収容を誇るスクリーン9の約500枚のチケットは即完。会場では、メンバーの木根尚登の登壇トークも発表されていたからか、上映前から客席会話もテンションも高めのようだ。「18と19ってセットリストが全然違うんだよね」「DVDでカットされてた<GET WILD ’89>も今日観れるんでしょ?」「なんか緊張してきた~」。期待値の高い声が耳に飛び込む程よい熱気のなか、司会に促され登壇ゲストがステージに登場した。大きな拍手に包まれ、少しだけ照れくさそうな木根尚登。スクリーン前に用意された椅子に腰掛け、リラックスした雰囲気のなか音楽コンシェルジュ・ふくりゅう氏とのトークは始まった。
ふくりゅう TM NETWORK 35周年おめでとうございます! TM NETWORKの木根さんと呼べるのが嬉しいですね。
木根尚登 あ、僕も(そうやって)呼ばれるのも嬉しいです(微笑)。
ふくりゅう さっそくですが、’94年5月18日、19日に東京ドームで行われた『TMN 4001 DAYS GROOVE』にはどんな想い出がありますか。
木根尚登 この2日間というのは自分の歴史の中でものすごく大きなことでした。この場で僕が言うのもなんですけど、TM NETWORKはずっと上質な音を求めてきていて、今回はレストアされたことによりそれがより良い音で聴いていただけると思うので、楽しみにしていてください。
ふくりゅう 2日間にわたって10年間のTMNヒストリーをふりかえるセットリストでした。
木根尚登 あ、TM NETWORKの由来はTaMa(多摩)という噂もあるらしいですが、違いますからね、語源はTimeMachine(タイムマシーン)ですからね(笑)。4001日のタイムマシーンに乗っていう意味も含めて、セットリスト2日目のアンコールで演奏したのが「TIMEMACHINE」。あれ僕が作った歌なんですよ(会場を見渡す)。
会場 (歓声&拍手)
木根尚登 ありがとうございます。でもあのときはまだライヴでしか演奏しない未発表の曲でした。そんな曲を最後にやったというのがTM NETWORKらしいと思いますね。
ふくりゅう あの2日間、メンバーのひとりとして木根さん個人はどんな気持ちで臨まれていたんですか。
木根尚登 僕は……じつはあの時に腰を痛めていまして。まぁ軽く骨折というか。
ふくりゅう (映像からは)そんなふうには見えなかったですが。
木根尚登 ええ、僕の不注意から起こしてしまったことなので、迷惑をかけないように、とにかくいろいろ一生懸命でした(笑)。
ふくりゅう ドキュメンタリーのシーンも含めて画面からは「終了」の寂しさは伝わってこない印象でしたが。
木根尚登 メンバー間では悲しさや寂しさみたいなものはそんなになくて、どこかで「終了」という名のプロジェクトを演出することをみんなで楽しんでいた部分もあったかもしれないですね。
ふくりゅう アンコールに入る前の本編ラストの「NIGHTS OF THE KNIFE」も凄い盛り上がりでしたね。もう膝から崩れて落ちているお客さんもいましたよね。
木根尚登 凄かったですね。僕らがその後に再結成した時にある方から「あのドームでの私の涙を返せ!」って言われましたから(笑)。
会場 (爆笑)
ふくりゅう 両日とも完成度も高いライヴでしたよね。
木根尚登 この先、未来にTMNというバンドを語るうえで、このドームの2日間だけで、TMNを紹介できると言ってもいいんじゃないかと思っています。
ふくりゅう (客席に向かって)今日この会場で、当時、東京ドームに行かれた方はどれくらいいらっしゃいますか?
会場 (半分以上が挙手)
木根尚登 お~けっこういらっしゃいますね。あ、僕もいたか(挙手)。あ~それから(客席に座っている、当時のサポートドラマーの阿部薫と山田亘を指し)あのふたりもドームのステージにいたね。さっき楽屋で会ったからてっきり登壇するのかと思ったら「観に来た」っていうから、「え! 客として観に来たんだ!?!?』って。(指差しながら)ステージ上がれば? ……上がらないの。そう。
ふくりゅう ツインドラムのおふたりが会場にいるのも嬉しいですね。
木根尚登 サポートしてくれたメンバーもそうですがTMNは昔から一緒にやってきた素晴らしいミュージシャン仲間でもあり、気心の知れた友達っていう気持ちも強いんですね。 お互い大好きチームみたいな感じですね。
ふくりゅう 木根さんも、ギター、アコギ、鍵盤、ハーモニカといろいろ演奏されていますよね。
木根尚登 これが最後という想いでしたからね。出来ることは全部やってやろう!という気持ちでしたね。広く浅くね(笑)。おかげさまでTMNでいろんなことが出来るようになりました。
ふくりゅう あ、これは絶対に聞きたかったんですけど。2日目終演後に、メンバー3人がエレベータに乗って移動する時に何か会話をしていますよね。あれ、何をしゃべっていたのですか?
木根尚登 うーん、よく覚えていないのですが、10年おつかれ云々じゃなくて、「さっき、あそこの演奏まちがえたでしょ?」みたいな、いつもと変わらない会話をしていたと思いますよ(笑)。
ふくりゅう あらためて2日間のセットリストを見ていま感じることはありますか。
木根尚登 思い入れのある楽曲はやっぱり「NIGHTS OF THE KNIFE」ですね。やっぱりこの曲は好き。ホテルの部屋で3人で会ったときに小室がデモテープを持ってきて。まだ歌詞もできていないこの曲を聴いて「すっごくいい曲だな」って思いました。そのときに3人で、この曲を最後にやりたいねって話していたのを今でも覚えています。だからライヴ当日に「NIGHTS OF THE KNIFE」を弾いているときは、ぐっと込み上げてくるものがありましたね。
ふくりゅう TM NETWORKの今後の活動についてメッセージをもらえますか。
木根尚登 これだけは言えるのは、今のところ3人とも元気です(笑)。そして僕らも皆さんと同じ想いです。それだけはお伝えします。
会場 (大きな拍手)
木根尚登 TM NETWORKの35年間はもちろん皆さん想いがあってのものですが、スタッフやメンバーの存在も大きいですね。いろいろな人に支えられてここまで来れたと思っています。デビュー当時はこんなに長く皆さんに応援していただけるとは夢にも思わなかったです。いまはそれが本当に何よりも嬉しいし、想い出を共有できることが幸せです。今日は本当にありがとうございます!
集まった500人のFANKSに感謝を伝えてステージをあとにした木根尚登。トーク中には、彼自身から、サプライズとして、このあとスクリーンで観る『TMN final live LAST GROOVE 5.18 』『TMN final live LAST GROOVE 5.19』が、36曲全曲ノーカットで2作連続5時間超えの「一挙見」マラソン東阪Zepp上映されることが発表された。「これ何が凄いかって、ライヴハウスの音響上映ということです。叫んでもいいんです(笑)。Zeppではみなさん昔を想い出してスクリーンに映る僕らに向かってギャーって思いっきり騒いでください」(木根尚登)。
登壇後、『TMN final live LAST GROOVE 5.18 』『TMN final live LAST GROOVE 5.19』は休憩15分を挟んで連続上映された。『5.19』ではもうじっと座って観ていることに我慢できなくなってしまったのだろうか。「TIME TO COUNT DOWN」でペンライトを振り始めたステージ近くの夫婦(!?)。松本孝弘もギターでゲスト参加し、初公開となった「GET WILD ’89」では隣席の男性も気がつけば拳を上げていた。映し出された眩しいスクリーンがTOHOシネマズ新宿のFANKSの顔を時おり照らすが、ラスト「TIMEMACHINE」では、筆者の後方席に並んでいた女性陣はほとんど泣いていた。エンドロールでは、来場者全員にプレゼントされた「TMN LAST GROOVE 1994 ロゴ入り特製マフラータオル」で涙を拭うFANKSも。新旧世代が一緒になって映画館という空間でTMN追体験する特別な時間。2019年「4月21日」は、参加したFANKSにとっては忘れられない夜となったようだ。最後に、そのFANKSの“声”をお届けする。
「25年前の東京ドーム2daysにもいました。あの時はアリーナで泣いて叫んでいたけれど今日は冷静に映像を観ることが出来ました。でもやっぱり次はZeppで踊りたいです!」(千葉県・40代・女性)
「今日は木根さんのトークからそのまま上映を観るというこれ以上は求めちゃいけない贅沢な時間をありがとうございました。え、全部で5時間半以上ですか? もうあっという間でした。大きな映像と迫力のサウンドに圧倒されまくりで、なんかいまちょっと震えています。ア~感動しましたー(←涙が出てます)」(山梨県・40代・女性)
「正直、あの頃の東京ドームの音はお世辞にも良いとは言えなかったけれど、今日のスクリーンの音は素晴らしかった! 3人の奏でる声と楽器がそれぞれ確認出来たことが嬉しかったです。でも、映像はもっと頑張れ!とエールを送らせてください。エラそうにごめんなさい」(東京都・50代・女性)
「2日目の松本(孝弘)さん、浅倉(大介)さんの若き日のゲスト共演がカッコ良すぎてシビれます。あの瞬間、ドームでも日本のポップ/ロックの最前線を感じたけれど、今日もその印象は変わりませんでした」(東京都・40代・女性)
「ほかのメンバーに比べて、圧倒的にUTSUのショットが多い印象ですが……ヴォーカルだから仕方ないんですかね。あ、私UTSUのファンだから全然いいんですけど(笑)」(神奈川県・40代・女性)
「私が2歳の時に行われた公演です。後追いで好きになっても周りにファンはいなかったから今日はこの会場に来るのが本当に楽しみでした。FANKS先輩たちと同じ空間を共有することが夢でもあったので、もうサイコーです。ありがとうございました。Zeppも行きます!」(埼玉県・20代・女性)
「松本(孝弘)さんのギターの加わった<GET WILD ’89>のライヴアレンジがやっぱりめちゃくちゃカッコいい。ドーム映えというか、スクリーン映えというか、大きいサウンド映えというか……」(東京都・40代・女性)
「今日は立って歌って叫んでもいい上映にして欲しかったぁー。みんなよくガマンして座っているなって思ってました。でも5時間以上、大きな音で聴いても疲れないのはサウンドの処理がいいからなのか。TMNの演奏がいいからなのか。どっちですか?」 (神奈川県・40代・男性)
[上映後TOHOシネマズ新宿ロビーにて]
写真/山本佳代子 レポート・文/安川達也(otonano編集部)
主催・企画・配給|(株)ソニー・ミュージックダイレクト
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