DEAR HEARTS / 伊東たけし
L.Aで録音した伊東たけし初のソロアルバム。サックス、キーボード奏者でもあるラリー・ウィリアムス(シーウィンド)がプロデューサーとして参加。低めの音域で、落ち着いたブラスユニゾンをうまく使ったホーンアレンジに、さりげないギターの
バッキング。ポップにまとめつつも、ジャズの遊び心や自由さが感じられる。伊東はリリコンが3曲のみであとはアルトを使用。ポール・ジャクソンJr.(g)、ネイザン・イースト(b)、ジョン・ロビンソン(ds)など、強力なサポートが入っている。
ホーンセクションがファンキーな〈ゴジラ〉と8ビートと16ビートがアップテンポで交錯する〈ミスター・ゴキゲン〉は、ラリー・ウィリアムスの曲。歌ものは2曲、ソウルフルで軽やかな〈セイ・イット・アゲイン〉、リリコンでヴォーカルと絡む〈ディス・マスカレード〉。
特に当時のスクェア・サウンドと共通点の多いのは、バラードの〈マリーナ〉。静かな夕暮れの海のように、ほのぼのとしたリリコンの音色が心に響く。今でも人気の高い名曲が、和泉宏隆が提供した〈オン・ベンチュラ・ブルバード〉。落ち着いたテンポにのってマイナーとメジャーを流れるように
キーが移り変り、鮮やかなメロディを伊東のアルトがくっきりと歌い上げる。細やかに作りこんだアレンジとアナログ・サウンドには温かみがあり、この時代のフュージョンらしい雰囲気が濃厚に漂う。