【“LOTUS”には日本人の魂が詰まっている】
このライヴ盤は73年7月3日と4日の大阪公演を収録しており、第一絶頂期にある若きサンタナ・バンドが日本のオーディエンスを前に繰り広げた凄まじい演奏と、のちにギネス世界記録にも認定される“22面体ジャケット”という破格のスケールを持つアートワークが今もなお語り継がれるライヴ・イン・ジャパンの金字塔的作品。企画から録音、写真、デザインなどレコード制作に必要なすべてを日本人が手掛けたこともあり、日本のサンタナ・ファンにとっては特別な意味を持つ作品でもある。そんな『ロータスの伝説』の録音で実際に使用されたアナログ・マルチテープが、日本のソニーミュージックの倉庫に長年保管されたままであることが昨年暮れに発覚、実に44年ぶりに蔵出しされた。
『ロータスの伝説』の録音で実際に使用されたアナログ・マルチテープ
74年以降は一度も使用されることがなかったアナログ・マルチテープは、一部テープ交換のため演奏が途切れている曲や何らかの理由で紛失したリールがあったものの、コンサート2日分の大半の演奏記録が70年代のテープとは思えぬほど良好なコンディションにあることが判明した。アナログLPの収録分数の関係で当時やむなくカットされた音源もしっかりと残されており、オリジナル盤にはない「ジャパン」「バンベレ」「ウム・ウム・ウム」「聖なる光」「ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン」「セイヴァー」「コンガ・ソロ」の7曲(約36分)を新たに加えることにより、大阪で演奏された全曲目がここに揃うこととなった。
鈴木智雄によるミックス中のコンソール(@Sony Music Studios Tokyo)
これら発掘音源のミックスはオリジナル『ロータスの伝説』やベック・ボガート&アピス『ライヴ・イン・ジャパン』、チープ・トリック『at武道館』など多くの名盤を手掛けてきたエンジニア・鈴木智雄によって施された。既発音源と極力違和感のないサウンドにすべく慎重に機材やケーブルを選定した上でミックスされ、アナログ・テープの持つナチュラルでダイナミックな音像を保ったままDSDミックス・マスターに落とし込まれた。オリジナル盤に欠けていた7つのピース(楽曲)が実際の曲順通りの場所に見事に収められたことで、最初から最後まで余すことのない「完全版」として稀代の名演が蘇った。
初来日の模様を追った「ミュージック・ライフ」表紙大特集(73年8月号)
そして、発掘音源の収録だけでは終わらないのが今回の「完全版」たる所以。日本オリジナルLP盤で採用されたクアドラフォニック・ヴァージョン(4chサラウンド・ミックス)もこのたび世界初の復活を遂げ、さらには超高解像度であるDSD 11.2MHzマスタリングによるSACD 4.0ch、SACD 2ch、CDを擁した高音質ハイブリッド盤となっている。加えて、あの横尾忠則が手掛けた空前絶後の“22面体ジャケット”がオリジナルに忠実に7インチ・サイズで復刻されるほか、当時のツアー・パンフレット(36p)や大阪公演チケットのレプリカ、豪華別冊ブックレット(64p)も封入される。まさに世界のサンタナ・ファンが再び驚愕すること必至の“究極のロータス”が、ここ日本で誕生した。なお、最新DSDマスターを用いた『ロータスの伝説』初となるハイレゾ配信も4月19日より開始される。
【カルロス・サンタナによる『ロータスの伝説 完全版』寄稿文】(抜粋)
『ロータスの伝説』は日本生まれの名盤です。私たちは、何か大きなことをやりたいという思いがあるのを自覚していました。それは日本公演のライヴ・アルバムを作ることでした。大阪公演のテープを聴いてみると、素晴らしい内容でした。それらのテープはこのバンドの最高の状態をとらえており、心から誇りに思えたものです。LP3枚組で日本制作のブックレットや画像を用い、すべてを才能ある日本人アーティストたちに手がけてもらいました。このアルバムは美しく野心に溢れ、音楽には活気がありました。これらの曲とこのアルバムを紐解くのは、次の日本ツアーが間近に迫っている私にとって大いに喜びを感じる作業でしたし、日本のソニーの友人たちとボーナス・トラックを掘り下げるのは最高の気分でした。『ロータス』には美しい感性があり、当時も今もサンタナの特徴として知られている、情熱のこもったエネルギーとのバランスが取れています。日本や世界中のブラザーやシスターと、さらなるお楽しみの加わったこの『ロータスの伝説』を分かち合うことができるのはとても光栄なことです。これらの曲には光のメッセージが込められており、そのサウンドは今日も共感を呼ぶでしょう。それは今、世界が必要としているものなのです。
――カルロス・サンタナ
TRANSMOGRIFY TOUR 2017
4/22(土)岩手:盛岡市民文化ホール
4/24(月)大阪:大阪市中央体育館
4/25(火)名古屋:センチュリーホール
4/27(木)東京:日本武道館
live情報はこちらから UDO 音楽事務所
【バイオグラフィー】
メキシコ出身。ヴァイオリニストの父の影響で5歳でヴァイオリンを、8歳でギターを弾き始める。サンフランシスコに移住し、66年にバンド “サンタナ・ブルース・バンド”を結成。69年に“サンタナ”としてデビュー、同年“ウッドストック・フェスティヴァル”に出演。当時ほぼ無名ながら衝撃的なパフォーマンスで大観衆を魅了し、一気に全米で人気を獲得する。デビュー・アルバム『サンタナ』が全米チャート4位、2ndアルバム『アブラクサス』(邦題『天の守護神』)」が全米チャート1位、シングル「ブラック・マジック・ウーマン」が全米チャート4位と大ヒットを記録、サンタナの初期代表作となる。様々なアーティストとコラボレーションした99年のアルバム『スーパーナチュラル』が特大のブレイク、マッチボックス・トゥウェンティのロブ・トーマスをフィーチャーしたサンタナ初の全米No1ヒット・シングル「スムーズ」はビルボード12週連続1位、アルバムも同じく12週連続1位という驚異的な成功を収める。続くシングル「マリア・マリア」も10週連続1位を記録し、2枚のシングルで全米チャート1位の座を約半年間も独占するという歴史的快挙を成し遂げて迎えた00年のグラミー賞では、最高の栄誉である「最優秀アルバム賞」 「最優秀楽曲賞」含む全9部門で受賞し、サンタナの第2黄金期が始まる。06年に紙ジャケットで再発された73年の初来日公演を収めたライヴ・アルバム『ロータスの伝説』の“22面体ジャケット”が最多面数を持つアナログLPジャケットとしてギネス世界記録に認定される。これまでに全世界で1億枚以上のセールスを記録。ローリング・ストーン誌が選ぶ「史上最も偉大なギタリスト」で20位に選出。