黄金の80年代、その幕開けを飾ったジャパニーズポップの金字塔、佐野元春『SOMEDAY』。その完全再現ライブが、2013年11月に東京と大阪限定4公演で行われ1万人を動員した。
本作品は、2013年11月16日Zepp
DiverCity
Tokyoでの公演を記録。バンドには、ダディ柴田、伊藤銀次など久しぶりの盟友たちも参加。
本編11曲に加え、ライブ会場のみの公開となったアンコール3曲をボーナストラックとして加えた全14曲を収録。アルバム「SOMEDAY」発売から40年となる2022年、最新リマスタリングを施しリリースされる。
名盤ライブ『SOMEDAY』について佐野はこう語った。「時代を経た仲間たちがこのライブで再び集まることは、1つの奇跡だ。観客と一緒に『俺たちは生き抜いてきたんだ』と確かめあう、そういう幸せに満ちたライブだった。
ライター本田隆氏による、ライナーノーツ
1980年代の幕開けと同時に登場し、「都会の夜景ってやつが気絶しながら笑ってら」と叫んだ元春は、過去も未来も見ていなかったように感じた。ただ、今だけを前のめりに、天啓を受けた人なら誰もが感じた得体のしれないロックンロールという衝動に突き動かされているようだった。その熱量がレコードの溝に刻まれていた。だから僕は夢中になれた。ファーストアルバム、セカンドアルバムとロックンロールの熱量をダイレクトに放出していた元春だが、岐路に立ち、身体の中の疼きをそのままにセルフ・プロデュースという形でソフィスケートされた音に自身のすべてを落とし込んだのが大傑作アルバム『SOMEDAY』だったと思う。
あれから40年。元春は今も現在進行形のまま、自らの音楽を模索し、開拓し続けている。SOMEDAY(いつか)はTONIGHT(今夜)となっても、そこで立ち止まることはなかった。時にはエッジを効かせ、時には豊潤に、時代の一歩先を見据えながらクリエイトし続けた音の数々は懐かしさという言葉とは無縁の場所に存在している。『SOMEDAY』にしても例外ではない。ティーンエイジャーの頃、数々の生きるヒントを示唆し、退屈な日々に彩りを与えてくれた音たちは、長い年月を経て心の中で今の音として熟成していた。心の隅にはかつてこのレコードと出逢って間もない日々の残像を忍ばせながら。
2013年、そんな『SOMEDAY』の完全再現ライブが東京と大阪で行われた。その熱狂がこのBru-rayに余すところなく収録されている。つまり、レコードを再現するということだから、曲順はもとより、アレンジもBPMも当時レコーディングされた音のままにライブステージでオーディエンスに届けるという試みだ。予定調和のないこれまでの彼のステージから考えてみても意外とも思えるが、その真意はパフォーマンスが始まった瞬間からゆっくりと紐解かれていく。
ステージの背面、大きなスクリーンには、『SOMEDAY』のアナログ盤が映し出され、ターンテーブルにセットされる。レコードに針を落とした瞬間会場に鳴り響くのは、そう、A面の1曲目に収録されている「シュガータイム」だった。バックにはドラムスの古田タカシら古くからの盟友の姿も見える。彼らと奏でるドリーミーなイントロが流れた瞬間フロアのオーディエンスの揺れるざわめきが、心の奥に潜んだ光景をそっと引き出してくれる。それは40年前、ひとりきりの部屋で『SOMEDAY』に針を落とした瞬間の多幸感と同じもだった。だが、それだけではない。アルバムのイントロダクションがステージとフロアが一体化した唯一無二の空間を包む光景は、楽曲と共に人生を歩み、心の中で熟成していったリアルな今の「シュガータイム」だった。それは元春にしてもバンドメンバーにしても、この場所に駆けつけたかつてのKIDたちも感じていたことだと思う。それぞれが生きてきた証となったメロディは、目の前で再現されることにより、ここでしかありえない奇跡として共有されてく。まさに元春が言うように『俺たちは生き抜いてきたんだ』と確かめ合った得難い時間だった。
世の中の虚構と矛盾にぶち当たる度にブレずに生きるタフさを伝えてくれた「ハッピーマン」、人生をスタートラインに戻しギアを入れ直す時に幾度となく聴いた「ダウンタウンボーイ」…そして「サムデイ」でピアノの旋律が鳴り響くと、若すぎて見えない理想をやみくもに追い求めた自分がオーバーラップして胸が熱くなる。アルバムと同じ曲順で再現されていくステージから、自分のレコードについた微かな傷から生じるノイズを思い出し、曲間のわずかな空白にも次に収録されたナンバーのイントロが頭に鳴り響く。そんな極めて個人的な世界がライブとして再現されていく。
そして後半、レコードであればB面の3曲目「ヴァニティ・ファクトリー」で完全再現というパッケージからはみ出したロックンロールの熱量を目の当たりにする。バッグの強靭なビートが生み出す硬質なグルーヴに飲み込まれながら、感情が溢れ出た元春のシャウトは、一瞬がすべてというライブの本領だった。ここから「ロックンロール・ナイト」への流れは、当時アルバムに秘めた精神性そのものだった。たどりついたはずだったロックンロール・ナイトに「たどりつきたい」と願うこの曲の背景には、大人になると、形あるものすべてのものを超越したロックンロールという純粋無垢な衝動にたどりつけなくなるのではないか…という矛盾を内包しているように思えた。そして、僕はこの矛盾と対峙するのを宿命だと感じることもあった。しかし、この不確かな感情が一気に氷解していく。理想郷とも言えるロックンロール・ナイトは、確かにこの場所に存在していた。この場所で元春と同じ瞬間を共有した人たちが『SOMEDAY』と共に歩んだ人生がここに帰結していた。悩み、傷つき、それでも自分だけの真実を探し求めていたかつてのKIDたちの目の前に、すべてのギヴ&テイクのゲームにさよならした世界が繰り広げられている。それが答えだった。
当時聴いたアルバムの息づかい感じながら、時にはパッケージからはみ出した熱量を感じながら元春は楽曲を通じオーディエンスと対話してゆく。その姿から2022年現在、リリースから40年という時を経たこのアルバムが今に続く礎だということを実感する。それは元春にとっても同じことだろう。
最後に。このBru-rayにはボーナストラックとして、『SOMEDAY』と同じく82年にリリースされ、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』に収録された「Bye Bye C-Boy」「マンハッタンブリッヂにたたずんで」「彼女はデリケート」も収録されている。特に、伊藤銀次を迎え「彼との出会いが僕にとって、とても大事なものになりました」というMCを添えた「彼女はデリケート」で体現されている疾走感もまた、あの頃のビートが素敵な未来へといざなってくれたと思わずにいられない名演だということも付け加えておきたい。
ライター:本田隆
https://reminder.top/monthly-2022-05-sanomotoharu/
2022年5月25日(水)発売 『名盤ライブ「SOMEDAY」』購入特典が決定!
2022年5月25日(水)に発売となる
佐野元春『名盤ライブ「SOMEDAY」』の購入特典が決定!
店舗別の4種類の特典となりますので、お早めにご予約ください!
【対象店舗/特典内容】
■Sony Music Shop ・・・ オリジナル缶バッジ
■TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く) ・・・ オリジナルポストカード
■楽天ブックス ・・・ オリジナルA4クリアファイル
■Amazon.co.jp ・・・ ビジュアルシート(2枚セット)
【注意事項】
※特典は数に限りがありますので、無くなり次第終了となります。あらかじめご了承ください。
※上記店舗以外での配布はございません。ご了承ください。
※特典絵柄は追ってご案内いたします。
※各オンラインショップに関して、カートが公開されるまでに時間がかかる場合がございますので、予めご了承ください。
※Amazon.co.jp、楽天ブックス、その他一部オンラインショップでは”特典対象商品ページ”と
”特典非対称商品ページ”がございます。
ご予約の際にご希望される商品ページかをご確認いただいてからご予約いただきますよう、お願い申し上げます。
「佐野元春 & THE COYOTE BAND 全国ホールツアー 2022 ‘WHERE ARE YOU NOW’」会場限定! 『名盤ライブ「SOMEDAY」』会場予約・購入特典が決定!
2022年4月9日(土)から開催される、「佐野元春 & THE COYOTE BAND 全国ホールツアー 2022 ‘WHERE ARE YOU NOW’」の会場販売にて、 5月25日(水)発売『名盤ライブ「SOMEDAY」』(MHXL-110)をご予約・ご購入いただいた方に、商品1枚のご購入につき1点のオリジナルギターピックをプレゼントいたします。
※公演チケットをお持ちでない方もご購入可能です。
※特典・商品がなくなり次第、販売終了となります。予めご了承ください。
【注意事項】
・4月9日(土)~5月22日(日)の会場に関して、商品のご予約は全額前金にて承ります。
・特典のオリジナルギターピックは商品と合わせてのお渡しとなります。
・待機列には、ご購入される方のみお並びください。お連れ様がいらっしゃる場合は、物販エリア外などでお待ち合わせください。
・お知り合いお友達を待たせての待機列への横入りは禁止いたします。複数回ご購入の方は、待機列の最後尾にお並びいただきますようお願いいたします。横入り等の不正は見つけ次第、最後尾にお並びいただきますのでご了承ください。
・事故・混乱防止のため、販売中であっても様々な制限を設けさせていただくことがあります。
・商品に不良があった際は、当日・スタッフまでお声掛けください。
(購入日以降の商品の返品・交換・返金は一切申し受け出来ませんのでご注意ください。)
・天候等の理由により、商品未着のため販売ラインナップが変更・販売を中止する場合がございます。また、アイテムにより販売開始時より売り切れの場合があります。販売商品は会場にて、ご確認いただきますようお願い申し上げます。
・転売およびオークション出品など、営利目的での購入はご遠慮ください。そのような事実が発覚した場合、今後のグッズ等の販売及びイベントの参加をお断りさせていただく場合がございます。
これらの注意事項をお守りいただけない方は、グッズなどの購入や会場のご利用をご遠慮いただく場合があります。また、物販そのものが中止となる場合もございます。
【新型コロナウィルス感染対策について】
当日はマスクの着用及び、こまめな手洗い・手指消毒にご協力ください。また、大声での会話はお控えください。
会場敷地内、及び物販エリアにおきましてはソーシャルディスタンスを確保した上でご案内させていただきますので、スタッフの指示に従ってお並びいただきます様、お願い致します。
※以下の項目に一つでも該当しない場合、ご来場していただく事が出来ません。ご来場いただく、当日にご確認をお願い致します。
・新型コロナウイルス陽性判定を受けていないこと、現在医師に自宅待機指示を受けていないこと。
・公演日前7日以内に新型コロナウイルスの陽性判定を受けた方との濃厚接触がないこと。
・公演日前7日以内に政府から入国制限ならびに入国後の観察期間を必要とされている国・地域等への渡航がなく、またその当該国・地域の在住者との濃厚接触がないこと。
・同居家族や身近な知人に感染が疑われる方がいないこと。
・公演当日、外出前に自宅で検温し、37.5
度未満であること。(入場時に非接触式体温計による検温も行います)
・咳・だるさ・鼻水・下痢・嘔吐・味や匂いを感じない等の症状がないこと。
■収録曲
- シュガータイム
- ハッピーマン
- ダウンタウンボーイ
- 二人のバースディ
- 麗しのドンナ・アンナ
- サムデイ
- アイム・イン・ブルー
- 真夜中に清めて
- ヴァニティ・ファクトリー
- ロックンロール・ナイト
- サンチャイルドは僕の友達
アンコール
- Bye Bye C-Boy
- マンハッタンブリッヂにたたずんで
- 彼女はデリケート
■ミュージシャン・クレジット
佐野元春 & HIS SPECIAL BAND:
佐野元春 (Vo.)
古田タカシ (Dr.)
長田 進 (Gt.)
佐橋佳幸 (Gt.)
Dr. kyOn (Key.)
西本 明 (Key.)
井上富雄 (Ba.)
大井 ’ スパム ’ 洋輔 (Per.)
ダディ柴田 (Sax.)
堂島孝平 (Cho.)
佐々木 久美 (Cho.)
伊藤銀次 (Gt./Cho.)
■プロダクション・クレジット
Produced by Moto 'Lion' Sano
Co-produced by 大井 ' スパム ' 洋輔
Recorded & Mixed by 渡辺省二郎
Mastering Engineer : 前田康二
Production Management:大本和典
2021 © M's Factory Music Publishers
■収録データ: 2013年11月16日 Zepp DiverCity Tokyo
佐野元春(さの・もとはる)プロフィール
1956年、東京生まれ。1980年、レコーディング・アーティストとして始動。83〜84年のニューヨーク生活を経た後、DJ、雑誌編集など多岐にわたる表現活動を展開、1992年、アルバム『スイート 16』で日本レコード大賞アルバム部門を受賞。2004年に独立レーベル「DaisyMusic」を始動し現在に至る。代表作品に『サムデイ』(1982)、『ビジターズ』(1984)、『スウィート 16』(1992)、『フルーツ』(1996)、『ザ・サン』(2004)、『コヨーテ』(2007)、『ZOOEY』(2013)、『Blood Moon』(2015) 、『MANIJU』(2017) がある。
■公式ウェブサイト「MWS」
https://www.moto.co.jp/
■公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/DaisyMusic
■公式Facebookページ
https://www.facebook.com/motoharusano