Paul Simon - Seven Psalms
Paul Simon

夢のなかに入ることができれば。

ポール・サイモン
『七つの詩篇』

Paul Simon
“Seven Psalms”

ポール・サイモン『七つの詩篇』を語る。

「この作品は、信仰に関する
私自身との対話でもある」
~ポール・サイモン

 音楽の長い歴史を通じて、一貫して、きわめて影響力の強い創作活動を展開してきたアーティスト、ポール・サイモンが新たな音楽作品を完成させた。まさに待望という言葉がふさわしい新作『七つの詩篇』。33分、7楽章を、あくまでも一つの作品として聴かれることを意図して制作された『七つの詩篇』は、従来のアルバムの概念を超越したものだ。

 アコースティック楽器だけを使い、ほぼポール・サイモン一人の演奏によって完成された『七つの詩篇』は、その技巧が頂点にあることを示すものであり、声とギターだけのシンプルな構成でありながら、強く訴えかける魅力にあふれている。複雑に練り上げられたこの素晴らしい作品は、聴く者を深く魅了し、瞑想の世界へと誘う。聖歌や賛美歌を思わせるサウンドスケープ。その中心にしっかりと位置を占めているのは、ポール・サイモンの歌詞。ギターの弦の響きに、いくつかのアコースティック楽器、さらには、近年きわめて高い評価を獲得しているイギリスのヴォーカル・アンサンブル、ヴォーチェス8、エディ・ブリケルらの美しい声楽要素が加わり、豊かな音の世界が紡がれていく。

「求め続けた魂の安らぎ、
詩篇、祈り。この新譜は、
そんなポールの一つの
到達点なのではないかと、
私は思うのです」
~柴門ふみ
(日本盤解説より抜粋)

『詩篇』とは本来、語られるものではなく、歌われるべきもの。その原点を踏まえながら、『七つの詩篇』は、フォーク・ミュージックの起源でもあるダヴィデ王の『詩篇』へとつながっていく。そのようにして生み出された『七つの詩篇』は、静かな感動を呼び起こす音楽体験であり、聴くごとに、細部までの豊かな味わいを聴きとることとなるはずだ。ポール・サイモンがこれまでに送り出してきた作品のどれとも異なるものであり、従来のジャンルという概念で語ることはできない。

 その音の世界をヴィジュアル面で補完するアートワークには、高名な風景画家トーマス・モランの『Two Owls / 二羽のフクロウ』の一部を拡大したものが使われている。

 プロデュースは、ポール・サイモンとカイル・クラシャム。『七つの詩篇』は、一つの組曲であり、それぞれに連なる7つの楽章で構成されている。

ポール・サイモン『七つの詩篇』

ポール・サイモン
『七つの詩篇』

(金)発売
◎解説・歌詞・対訳付
◎Blu-spec CD2
◎SICP-31629
◎¥2,860(税込)

  1. ザ・ロード
    The Lord
  2. ラヴ・イズ・ライク・ア・ブレイド
    Love Is Like a Braid
  3. マイ・プロフェッショナル・オピニオン
    My Professional Opinion
  4. ユア・フォーギヴネス
    Your Forgiveness
  5. トレイル・オブ・ヴォルケイノズ
    Trail of Volcanoes
  6. ザ・セイクリッド・ハープ
    The Sacred Harp
  7. ウェイト
    Wait

▲『七つの詩篇』は一つの組曲であり連なる七つの楽章で構成されているため、CDのトラック表記は1だけとなります。

Paul Simon

ポール・サイモン

60年に及ぶその実り豊かな音楽活動を通じてポール・サイモンは、『明日に架ける橋』『サウンド・オブ・サイレンス』『グレイスランド』など、不朽の名作を世に送り出してきた。グラミー賞の受賞は、16回。ロックンロール・ホール・オブ・フェイム=ロックの殿堂には2回迎えられていて、ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム、ケネディ・センター名誉賞、米国議会図書館のガーシュウィン賞など、多くの場で顕彰されてきた。ガーシュウィン賞の受賞は、ポピュラー・ミュージックが世界の文化にはたしてきた功績を認められてのものだった。

サイモンは、2011年にはアメリカ芸術科学アカデミーの会員に迎えられ、2012年にはヨー・ヨー・マとともに格式高いポラー・ミュージック・プライズを授けられている。2019年には、ミュージシャンとしてはじめて、スミソニアン国立米国史博物館からグレート・アメリカン・メダルを授与された。彼の作品で、映画『卒業』に使われた「ミセス・ロビンソン」は、アメリカ・フィルム・インスティテュートの『100年の100曲』に選ばれている。また、ポール・サイモンが取り組んできた社会貢献活動には、共同設立者の一人でもあるチルドレンズ・ヘルス・ファンドがある(アメリカ合衆国の低所得者家庭の子供たちに適切な医療ケアを提供することを目的とした基金)。さらに、絶滅危惧種の保存を目的としたE.O.ウィルソン生物多様性保全基金の理事としても貢献している。