2012年7月15日、ロンドンで行なわれたハード・ロック・コーリング・フェスティバル最終日、ヘッドライナーとして登場したポール・サイモン&バンドと共にステージに立ったのは、傑作『グレイスランド』に参加していたミュージシャンとスペシャル・ゲスト。3時間に及ぶセットをザ・ガーディアン紙は「彼のキャリア史上に残るコンサートの一つ」だと絶賛。デイリー・テレグラフ紙は「ポール・サイモンを聴いて育った者にとって、一つに集まり、心を通わせ、”グレイスに溢れる地” へと人々の心を連れて行く音楽の力を改めて知る機会となった」と称えた。
25年前にロイヤル・アルバート・ホールで南アフリカのミュージシャンをバックに行ったライヴは、称賛を浴びながらもアパルトヘイトについて物議をかもした。しかしながら今回も当時と同様に南アフリカのミュージシャンを起用、アルバムの曲を甦らせ一層の称賛を得る事となったのである。
今回初めて商品化となる『ザ・コンサート・イン・ハイド・パーク』は2012年ハード・ロック・コーリング・フェスティバルでの歴史的コンサートの記録である。セットリストはグラミー受賞から25周年を迎えた傑作『グレイスランド』からの曲を中心に、「僕のコダクローム」「僕とフリオと校庭で」「恋人と別れる50の方法」等に代表されるポール・サイモン不朽のヒット曲やサイモン&ガーファンクル時代の2曲を含む、全キャリアから選ばれた名曲の数々が並ぶ。ステージに立ったのは、『グレイスランド』に参加していたオリジナル・グレイスランド・ミュージシャン(ヒュー・マセケラ、レディスミス・ブラック・マンバーゾら)に加え、サプライズ・ゲストにレゲエの神様ジミー・クリフが登場。ジミー・クリフはオリジナル曲「ハーダー・ゼイ・カム」と「遥かなる河」(この2曲はDVDのみに収録)を演奏し、ポール・サイモンを迎えて「ヴェトナム」を共演。レゲエのリズムに乗って続く曲の「母と子の絆」でもデュエットを披露し、当作品のハイライトのひとつとなった。
今を感じさせながら、懐かしさも醸しだす傑作ライヴ。サイモン&ガーファンクル時代から、高い評価を受けた2011年当時の最新作『ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット』までの歌の数々。『ザ・コンサート・イン・ハイド・パーク』を彩るのは50年の年月を越えて旅する、ポール・サイモンのエッセンシャルでタイムレスなソングブックである。
ポール・サイモン『ザ・コンサート・イン・ハイド・パーク』は、CD2枚にDVDを加えた3枚組。ディスク以外には16ページのカラーブックレット、書下ろし解説と歌詞・対訳を掲載した日本版ブックレットが付属される。