リリースノート
佐野元春が新たな音楽創作追求のための渡米直前にリリースされ、5月2日付のLPチャートで自身初の1位を獲得。収録曲にはそれまでに発表された3枚のアルバム、『バック・トゥ・ザ・ストリート』『ハートビート』『サムデイ』と、1982年発表の『NIAGARA TRIANGLE VOL.2』(大瀧詠一・杉真理・佐野元春)から14曲を選曲。初期音楽創作活動の集大成的な意味を持たせながら、その一方で作品を貫くコンセプト・ストーリーに合わせ、「グッドバイからはじめよう」「モリスンは朝、空港で」等、一部の楽曲は再レコーディング・再編集が行われるなど、"ベスト盤"とは全く違った、当時はまだ概念として確立していなかった"コンピレーション・アルバム"として完成させた。一つ一つの楽曲をプロダクツ化する際のアプローチを完璧に築き上げたという点で、佐野元春の"プロダクツ表現"の初期完成形と言える。
当然そこには佐野元春3年間の劇的な成長と、そのベースにあった一貫した方向性が窺えると同時に、"シングル""ポップ・ミュージック"等に対しての確固たる考えや強い思い入れが反映されている。
またサブタイトルは、作品の意義がその時代で完結するのではなく、次の時代・世代に受け継がれる事を意図し、未来の日本の音楽への希望と警鐘を込めたメッセージにほかならない。そして、佐野が思い描いた通り、30年後の現在では、収録の14曲をはじめ多くの楽曲がポップ・ミュージックのスタンダードとして、時代・世代を超えて多くのリスナーに愛され続けている。
今回、全曲最新リマスター・高品質(Blu-spec CD2)規格により、作品の力がさらに引き出されており、このアルバムに込められた意志や想いをより強く深く感じ取ることができるはずである。『No Damage』は、さらに未来へと繋がるコンピレーション・アルバムへと生まれ変わったのだ。