1980年2月25日、シャネルズ(後にラッツ&スター)のリーダー/リード・ヴォーカリストとしてシングル「ランナウェイ」でデビューしたマーチン=鈴木雅之。そのデビュー40周年を記念してリリースされた豪華アルバム『ALL TIME ROCK 'N' ROLL』から、さらなるとびきりのギフトが届いた。3枚組(初回盤は4枚組)のアルバムの冒頭を飾ったパーティー・チューン「Ultra Chu Chu Medley」をA面に、そして鈴木雅之の原点であるドゥーワップの名曲をカヴァーした「Tears On My Pillow」をB面に収めたアナログ・7インチ・シングル。共に鈴木雅之とプロデューサー・小西康陽のコラボレーションが「どうだ」とばかりに結実した珠玉の2曲が収められている。
今回、この2曲を7インチのためにL.A.の巨匠エンジニアであるバーニー・グランドマンがカッティング。アナログならではの最高の音質も追求されているのも大事なところ。
こうして完成した7インチだが、鈴木雅之のヒストリーを遡ってみれば、7インチでのリリースはソロとしての4thシングル「DRY・DRY」(1988年)以来、なんと32年ぶり。アナログ盤/カセットテープ〜CD/MD〜ダウンロード/ストリーミング、さらに動画配信と、音楽の聴き方が劇的に変化してきたことも鈴木雅之の40年のヒストリーとリンクする。
その時代の変遷の中であらためてアナログ盤が煌めきを増している2020年。「ポップに音楽を楽しむことの悦び=ロックンロール」を耳触りと手触りで伝えてくれる7インチ版「Ultra Chu Chu Medley」は、深い記憶に残るこの年に時空を超えてやってきた、まさに煌めきのギフト。ファン垂涎、マニア感涙、そして、若き音楽ファンには最高にフレッシュな贈り物に違いない。
SIDE-A
Ultra Chu Chu Medley〈ハリケーン~街角トワイライト~
「ハリケーン」
作詞:湯川れい子 作曲:井上大輔
「街角トワイライト」
作詞:湯川れい子 作曲:井上忠夫
「
作詞:田代マサシ 作曲:鈴木雅之
Edited by 小西康陽
「Ultra Chu Chu Medley」は、「ハリケーン」「街角トワイライト」「
以前から「ピチカート・ファイヴのサウンドがずっと気になっていた」と語っていた鈴木雅之と小西康陽の直接のコラボレーションは、鈴木雅之の前作アルバム『Funky Flag』がスタートライン。その時点でポップスやR&Bのフェイヴァリット・アーティストの話で盛り上がったという二人。特に60年代末から70年代にかけて活躍し、シャネルズの原点ともなったロックンロール・エンタテインメント・グループ、シャ・ナ・ナが好きだという話で意気投合したという。しかも、DJとしても活躍してきた小西康陽が「ハリケーン」をはじめとするシャネルズ/ラッツ&スターの7インチを長年DJプレイしてきたとあって、「Ultra Chu Chu Medley」の制作現場で「7インチを作りたい」という話になったというのも頷ける。
SIDE-B
Tears On My Pillow〈with 少林兄弟、佐藤善雄〉
作詞・作曲:Lewis Al・Bradford Sylvester
編曲:小西康陽
「カヴァーこそがヴォーカリストとしてのスタートライン」と語るマーチンらしく「Tears On My Pillow」を収録。リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズがオリジナル(1958年)だが、シャ・ナ・ナのファンだという共通点から、今回は「シャ・ナ・ナのヴァージョンを意識してみたんだ」(鈴木雅之)という音楽的な遊び心のアレンジが施された。
この「Tears On My Pillow」やアルバムに収録された「Good Times, Rock and Roll」はシャネルズがアマチュア時代から得意としてきた、いわば十八番。40周年どころでは済まされない、鈴木雅之の原点中の原点への思いがアナログ・7インチに刻まれることになった。その思いを支える演奏は、小西康陽が推す注目のバンドの少林兄弟。そして、シャネルズ/ラッツ&スターのオリジナル・メンバーの佐藤善雄、鈴木雅之のツアー・メンバーである高尾直樹、そして新鋭DAISUKEが参加。通常は、女性コーラスが入るスタイルが多いマーチンだが、今回は男性オンリーで固めることで、あらためてドゥーワップ・グループへのこだわりも聴かせてくれている。
渡辺 祐 (Do The Monkey)