Klaus Nomi
Nomi

Klaus Nomi
the 40th anniversary
of his death

80年代初頭、
ニューヨークに突如舞い降りた、
天上の歌姫の歌声を再び…

没後40年記念
クラウス・ノミ

4タイトル再発
発売

Klaus Nomi

2023年は80年代初頭に一世を風靡した奇才クラウス・ノミが1983年8月6日にニューヨークで39歳という若さでこの世を去ってから丁度40年目となる。

その没後40年という節目の年に、あらためて彼が残した作品を再発し、短いながらもシーンに衝撃を与えた彼の活動にスポットを当てる。

今回再発するタイトルはオリジナル・アルバム2タイトル、ライヴ盤、ベスト盤の4タイトル。日本盤CDの発売は6月21日(海外は6月16日発売)。

Klaus Nomi

シンガーとしての彼の声域はバス・バリトンからカウンターテナーまでと並外れて広かった。ニュー・ウェイヴのグループに囲まれた、カリスマ性の高いステージ上での存在感や、パーセルのアリアを歌っているときなど、彼のこの世のものとは思えない幽玄なスタイルは観衆に畏怖の念を抱かせた。ニューヨークに暮らしていたヨーロッパ人のクラウス・ノミは、複雑かつ才能豊かな人物だった。

1979年、ベルリン時代の真っ只中にいたデヴィッド・ボウイが、前途有望な奇才にいち早く注目。NBC TV『サタデー・ナイト・ライヴ』の特番にバックアップ・シンガーとして彼を抜擢し、一躍注目される存在になる。

テレビ出演後、ライヴ会場に多くのファンが殺到するようになり、1980年に待望のデビュー・シングル「キーズ・オブ・ライフ」をリリースする。1981年にはファースト・アルバム『オペラ・ロック』をリリースと、活躍の場を広げていった。

翌1982年にはセカンド・アルバム『シンプル・マン』をリリースする。しかし、この頃には既にHIVに感染しており、身体はすっかり衰弱していた。1983年8月6日にNYの病院でエイズにより39年間の短い生涯を終えた。

Klaus Nomi

クラウス・ノミは音楽界で恐らく初の“有名な”エイズの犠牲者だった。当時は「ゲイの癌」というかなり嘆かわしい言及のされ方をされており、台頭しつつあったこの病がいかにほとんど理解されていなかったかを示している。

唯一無二のアーティストの命は、レコードがゴールド認定され、コンサート・ホールが酔いしれ、ファッション界が彼に魅了されていたスターダムの頂点で奪われることになってしまった。

クラウス・ノミは1979年から1982年にかけてチャートのトップを席巻し、その後どこか別の惑星にある故郷へと帰っていった…。

当時、日本ではパルコや石橋楽器とのコラボレーションやセイコーのCMで記憶に残っている人も多いかもしれない。あの『スネークマンショー』にも彼の「コールド・ソング」が使われているので、こちらで彼の名前を知った人も。また、江口寿史の漫画『ストップ!ひばりくん』の中でも彼のキャラクターが使われていた等など、一時は“時に人”として話題を呼んでいた。

The Cold Song (censored version)

2003年には彼の半生を綴ったドキュメンタリー映画『ノミ・ソング』がドイツで制作・劇場公開された。映画は2004年ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品され、テディ・ベア賞も受賞。日本でも2005年に渋谷シアター・イメージフォーラムで劇場公開され、話題になった。映画はその後DVDでもリリースされている。

Nomi Song (Official Video)

CD発売に先駆けて、4月28日に4タイトルが配信スタート(世界初のデジタル化)。

ベスト盤『アンコール~ベスト・オブ・クラウス・ノミ(Encore... Nomi’s Best) )』(1983年)は立体音響化(ドルビーアトモスと360リアル・オーディオ)でも配信となった。

また、今回の再発にあわせて5曲(「The Cold Song」「Nomi Song」「Simple Man」「Falling In Love Again」「Lightning Strikes」)のMVもHDで完全復元され公開中(YouTubeで視聴可、本ページにも掲載)。

海外ではCDと同時発売でヴァイナルも発売される。

クラウス・ノミ
『オペラ・ロック(KLAUS NOMI)

〈オリジナル1981年発表〉

2023年6月21日発売/SICP-31625/¥2,300(税込)/高品質Blu-spec CD2/完全生産限定盤
クラウス・ノミ『オペラ・ロック(KLAUS NOMI)』
◎日本盤CDのみ2023年最新リマスター音源 ◎日本盤のみ紙ジャケット仕様 ◎A式シングルジャケ、内袋復刻、日本LP帯復刻 ◎書き下ろし解説(山田順一) ◎歌詞・対訳付

1981年に発表した記念すべき1stアルバム。代表曲「トータル・イクリプス」、バロック音楽の作曲家ヘンリー・パーセルの音楽劇『アーサー王』の中の歌曲のカヴァー「コールド・ソング」 など、全10曲を収録。

  1. キーズ・オブ・ライフ
    Keys Of Life
  2. ライトニング・ストライクス
    Lightning Strikes
  3. ツイスト
    The Twist
  4. ノミ・ソング
    Nomi Song
  5. ユー・ドント・オウン・ミー
    You Don’t Own Me
  6. コールド・ソング
    The Cold Song
  7. ウェスティング・マイ・タイム
    Wasting My Time
  8. トータル・イクリプス
    Total Eclipse
  9. ノミ・チャント
    Nomi Chant
  10. サムソン・アンド・デリラ(ライヴ・ヴァージョン)
    Samson And Delilah (Aria)[Live version] Recorded Sept. 20, 1980 at Merlyn's, Madison, Wisconsin

クラウス・ノミ
『シンプル・マン(SIMPLE MAN)

〈オリジナル1982年発表〉

2023年6月21日発売/SICP-31626/¥2,300(税込)/高品質Blu-spec CD2/完全生産限定盤
クラウス・ノミ『シンプル・マン(SIMPLE MAN)』
◎日本盤CDのみ2023年最新リマスター音源 ◎日本盤のみ紙ジャケット仕様 ◎A式シングルジャケ、内袋復刻、日本LP帯復刻 ◎書き下ろし解説(山田順一) ◎歌詞・対訳付

1982年に発表した2ndアルバムにして遺作となった作品。バロック音楽の作曲家ヘンリー・パーセルの歌劇やルネッサンス期の作曲家ダウランドの歌曲、「オズの魔法使い」のカヴァー曲など全12収録。

  1. フロム・ビヨンド
    From Beyond (Based on the song “If My Complaints”)
  2. アフター・ザ・フォール
    After The Fall
  3. ジャスト・ワン・ルック
    Just One Look
  4. フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン
    Falling In Love Again
  5. アイ・シー・ユー・アー・オーケー
    Icurok
  6. ラバーバンド・レーザー
    Rubberband Lazer
  7. ウェイワード・シスターズ
    Wayward Sisters (From "Dido & Aenaes")
  8. ディン・ドン
    Ding Dong (The Witch Is Dead)
  9. スリー・ウィッシズ
    Three Wishes
  10. シンプル・マン
    Simple Man
  11. デス
    Death (from “Dido & Aenaes”)
  12. リターン
    Return (Based on the song “If My Complaints”)

クラウス・ノミ
『アンコール~ベスト・オブ・クラウス・ノミ(Encore... Nomi’s Best)

〈オリジナル1983年発表〉

2023年6月21日発売/SICP-31627/¥2,300(税込)/高品質Blu-spec CD2
クラウス・ノミ『アンコール~ベスト・オブ・クラウス・ノミ(Encore... Nomi’s Best)』
◎日本盤CDのみ2023年最新リマスター音源 ◎デジパック仕様 ◎書き下ろし解説(山田順一) ◎歌詞・対訳付

80年代初頭、ニューヨークに突如現われ、ロックとオペラを見事に融合させた唯一無二のパフォーマー、クラウス・ノミの世界に誘う究極のベスト盤。「コールド・ソング」「トータル・イクリプス」「シンプル・マン」などの代表曲やアルバム未収録「好きにならずいられない」など、13曲収録。日本初CD化。

  1. ファンファーレ
    Fanfare
  2. コールド・ソング
    The Cold Song
  3. トータル・イクリプス(ライヴ・ヴァージョン)
    Total Eclipse (Live version)
  4. 好きにならずにいられない
    Can’t Help Falling In Love
  5. シンプル・マン
    Simple Man
  6. ウェスティング・マイ・タイム
    Wasting My Time
  7. ウェイワード・シスターズ
    Wayward Sisters (From “Dido & Aenaes”)
  8. ディン・ドン
    Ding Dong (The Witch Is Dead)
  9. ユー・ドント・オウン・ミー
    You Don’t Own Me
  10. くるみの木
    Der Nussbaum
  11. ライトニング・ストライクス
    Lightning Strikes
  12. ツイスト
    The Twist
  13. サムソン・アンド・デリラ (ライヴ・ヴァージョン)
    Samson And Delilah (Aria) [Live version]
     (Klaus Nomi Live performance recorded September 20, 1980 at Merlyn’s, Madison, Wisconsin)

クラウス・ノミ
『イン・コンサート(In Concert)

〈オリジナル1986年発表〉

2023年6月21日発売/SICP-31628/¥2,300(税込)/高品質Blu-spec CD2
クラウス・ノミ『イン・コンサート(In Concert)』
◎日本盤CDのみ2023年最新リマスター音源 ◎デジパック仕様 ◎書き下ろし解説(山田順一) ◎歌詞・対訳付

1979年、ニューヨークのハラーで行った貴重なライヴ音源。「コールド・ソング」 「トータル・イクリプス」 「ノミ・ソング」など、8曲を収録。日本初CD化。

  1. キーズ・オブ・ライフ
    Keys Of Life
  2. フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン
    Falling In Love Again
  3. ライトニング・ストライクス
    Lightning Strikes
  4. ノミ・ソング
    Nomi Song
  5. ツイスト
    The Twist
  6. トータル・イクリプス
    Total Eclipse
  7. アイ・フィール・ラヴ 
    I Feel Love
  8. サムソン・アンド・デリラ 
    Samson And Delilah : Aria Live Performance Recorded at Hurrah’s 1979 (New York)

クラウス・ノミ
『リミキシーズ』

2023年9月29日(世界同時発売)/SICP-6547/¥2,640(税込)
クラウス・ノミ『イン・コンサート(In Concert)』
◎解説:山田順一 ◎歌詞・対訳付

アルノー・レボティーニ、ザ・ハッカー、パラ・ワン、アガー・アガー、ヴィンス・クラーク、フラベール、 キャンブラスター、マッド・ディープ。彼らがクラウス・ノミの曲とそのたぐいまれな声を大胆にリミックス。

  1. コールド・ソング(アルノー・レボティーニ・リミックス)
    The Cold Song [Arnaud Rebotini Remix] 5:49
  2. キーズ・オブ・ライフ(ザ・ハッカー・リミックス)
    Keys Of Life [The Hacker Remix] 6:06
  3. アイ・シー・ユー・アー・オーケー(パラ・ワン・リミックス)
    ICUROK [Para One Remix] 5:41
  4. シンプル・マン(アガー・アガー・リミックス)
    Simple Man [Agar Agar Remix] 4:10
  5. ノミ・ソング(ヴィンス・クラーク・リミックス)
    Nomi Song [Vince Clarke Remix] 5:14
  6. ライトニング・ストライクス(フラベール・リミックス)
    Lightning Strikes [Flabaire Remix] 5:49
  7. キーズ・オブ・ライフ(キャンブラスター・リミックス)
    Keys Of Life [Canblaster Remix] 5:20
  8. コールド・ソング(マッド・ディープ・リミックス)
    The Cold Song [Mud Deep Remix] 6:18

80年代初頭のNYで奇抜な服装を身に纏ってのパフォーマンスで注目を浴びた鬼才クラウス・ノミ。彼の没後40年を記念し、アーティストとしてのレガシーに敬意を表するというスピリッツのもと、フランスをはじめ世界のエレクトロニック・ミュージック・シーンの精鋭たちが一堂に会した。どれもかなり大胆なリミックスが施されている。所謂、単なるリミックスを超えた“リ・メイク/リ・モデル(再生産/再構築)”と言えばいいだろうか。ポップとオペラ。“ニューウェイヴ”のダークな面と華やかな面。エレクトロニック・ミュージックのパイオニアとなったヨーロッパとロックの発祥地となったアメリカ。それらを結ぶ懸け橋となったクラウス・ノミのスピリッツを継承したかのような、実にアーティスティックなリミックス・アルバムとなった。

    『リミキシーズ』収録曲の詳細
    (プレスリリースより)

  • 1.「コールド・ソング」 アルノー・レボティーニ

    20年以上フランスのエレクトロニック・ミュージック・シーンの第一人者を務めるアルノー・レボティーニはソロ・アーティストであり、プロデューサーであり、リミキサーであり、ブラック・ストロボの首謀者にして結成メンバーであり、映画音楽作曲家(『BPM ビート・パー・ミニット[120 battements par minute]』で2018年度セザール賞の作曲賞[best film score]を受賞)でもある。アルノーは「コールド・ソング」を選び、多くの人々が息を呑みそうな強烈でアップテンポなクレッシェンドへと変貌させている。

  • 2.「キーズ・オブ・ライフ」 ザ・ハッカー

    同じくフランスのエレクトロ・シーンの鍵を握るザ・ハッカーの評判は90年代半ばから高まる一方であり、中でもミス・キトゥンとのコラボレーションで世界的な成功を収めている。彼らは3枚のアルバムを共作してきた。ザ・ハッカーは自身のプロダクションの他、マーク・アーモンド、エア、ニッツァー・エブなど、たくさんのアーティストとコラボレーションを行ってきた。2009年にはゲサフェルスタインとともにゾーン・レーベルを設立。

  • 3.「アイ・シー・ユー・アー・オーケー」 パラ・ワン

    多彩なアーティスト、パラ・ワン。まずはヒップホップ、その後エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーとしてキャリアをスタートさせたパラ・ワンは、ソロ・アルバム『エピファニー』『パッション』『クラブ』でいち早く自由に羽ばたいた。また、バーディ・ナム・ナムなど多数のアーティストのプロデュースも行っており、最近ではメリエム・アブルアファのデビュー作を手がけた。彼の作品は映画界でも認められており、セリーヌ・シアマ監督作品の作曲を担当しているが、中でも最新作『燃ゆる女の肖像[Portrait de la Jeune Fille en Feu]』はカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するとともに、2020年度セザール賞11部門にノミネートされた。彼は短編映画の監督とプロデュースも行ってきた。自身の最新作『スペクトル:マシーンズ・オブ・ラヴィング・グレイス』(2021年5月リリース)は、初の長編映画『サニティ、マッドネス&ザ・ファミリー』(2021年暮れ公開)のサウンドトラックでもある。

  • 4.「シンプル・マン」 アガー・アガー

    EP「カルダン」と、ヒット曲「プリティエスト・ヴァージン」「アイム・ザット・ガイ」「ソーリー・アバウト・ザ・カーペット」を擁するアルバム『ザ・ドッグ・アンド・ザ・フューチャー』に続き、クララ・カッパグリとアルマン・ブルティールからなるデュオが、ジョナサン・コリンの開発したビデオ・ゲームとともにシーンに戻ってきた。『プレイヤー・ノン・プレイヤー』はアルバムとビデオ・ゲーム両方の名前であり、親密性の侵害、有限境界から逃れる必要性、そして龍たちについて交互に語っている。
    彼らは新作を引っ提げて、ヨーロッパ最大規模のフェスティヴァル数ヶ所や、北米、メキシコ、トルコをまわる予定。

  • 5.「ノミ・ソング」 ヴィンス・クラーク

    デペッシュ・モード、ヤズー、さらには自身最長のプロジェクト、イレイジャーの結成メンバー、ヴィンス・クラークは、エレクロトニック・ミュージックのみならずポップ・ミュージック全般における真のレジェンドである。ロックンロールの殿堂入りを果たし、ブリット・アワードを数回受賞したヴィンスは、世界的ヒット曲を数多く書き(「ジャスト・キャント・ゲット・イナフ」「サムタイムズ」「オー・ラムール」)、J.M.ジャール、ザ・スパークス、ザ・ヒューマン・リーグといったアーティストたちとのコラボレーションやリミックス・プロジェクトに定期的にその才能を寄与している。

  • 6.「ライトニング・ストライクス」 フラベール

    ラルフ・マルアーニはパリのレーベルD.KOレコーズの共同オーナー、シークレット・ヴァリュー・オーケストラでのベース演奏、最近ではサイケ・ロック・プロジェクトのアブキール、そしてソロのフラベール名義でのエレクトロニック・プロダクションの仕事を通じ、独自の音楽的な宇宙を築き上げてきた。現在29歳のフラベールは既に3作のアルバムをリリースしている他、数多くのEP、出演、リミックスを重ねており、早くもフランス全土はもとより国境を越えても活躍している(トレゾア、ロフタス・ホール、プラーターサウナなど)(訳注:クラブ名)。彼の音楽はムーヴ・DやポイントG/DJグレゴリー他多数のレジェンド級アーティストたちや、最も成功した同年代のアーティストたちにも認められている。2023年はD.KOレコーズ創立10周年やアブキールのセカンド・アルバムのリリースがあり、間違いなくエキサイティングな年になるだろう。

  • 7.「キーズ・オブ・ライフ」 キャンブラスター

    演奏家、作曲家、プロデューサー、そしてモジュラー・シンセサイザーの魔術師、キャンブラスターが、デジタル・カルチャーや、そこから派生したビデオ・ゲームなどに対する強い嗜好をかねてから持っていたのは言うまでもない。実際彼がキャリアをスタートさせたのは13歳のとき、『パンプ・イット・アップ』などのリズム・ゲームやアーケード・ゲームの作曲者としてだった。(自身が結成メンバーである)クラブ・シュヴァルやリドとのコラボレーション、カニエ・ウェスト、セオフィラス・ロンドン、GENER8ION(ジェネレイション)のプロデュース、その前にカシミア・キャット、チャーリーXCXやA.G.クックのリミックスを手がけたのち、彼は数ヶ月スタジオに閉じこもり、ソロ・プロジェクトを発展させた。2023年は彼の返り咲きの1年であり、この秋にはミックステープがリリースされ、その後デビュー・アルバムが2024年にリリースされる予定。

  • 8.「コールド・ソング」 マッド・ディープ

    マッド・ディープはD.KOレコーズ創立者のひとりである。クルーにとって紛れもないライブラリ的存在の彼は、レコードのすべてを知り認識しており、エレクトロニック・ミュージック界の正真正銘の生ける百科事典である。
    ソロとグループ両方のプロデュースも手掛ける彼は、同レーベルの多数のプロジェクトに携わっており、シル・ショー名義ではメジグと、マンディゴ名義ではGGGGとコラボレーションを行う他、シークレット・ヴァリュー・オーケストラの一員としても活動している。

[リミキシーズ・ライナーノーツ]
(CDブックレットより抜粋)

クラウス・ノミのリミックス・アルバムに関しては、プロジェクト・スタート時のアナウンスですでに予告されていたのだが、果たしてどんな内容になるのか興味津々だった。恰好のリミックス・ネタになりそうなノミではあるが、これまで彼の音楽を使ったものは意外に少なく、04年に公開されたドキュメンタリー映画『ノミ・ソング』のDVD用に制作された「Total Eclipse(The Atomic Party Mix)」(リチャード・バロン)、「Mon Coeur(L.H.O.O.Q. Mix)」(シザー・シスターズのアナ・マトロニックとセス・カービーのユニット、アイ・ラヴ・ユー)、「Total Eclipse(The Man Parrish Mix)」(生前のノミとも仕事をしていたマン・パリッシュ)、「Coeur Total(Dremstat’s 22 Year Remix)」(ケヴィン・J.サリヴァン)、「Mon Coeur(Moog Cookbook Mix)」(ロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアとブライアン・ケヒューのムーグ・クックブック)という5つのトラックをプロモーション・マキシ・シングル「The Nomi Song(Remixes)」として05年に配布したほか、ドイツのテクノDJ、DJヘルが「コールド・ソング」をノイエ・ドイチェ・ヴェレ(ジャーマン・ニュー・ウェイヴ)中心のミックスCD『Coming Home』(11年)に収録したり、「Presents Klaus Nomi Cold Song 2013」(13年)と題した12インチをリリースしたくらいだった。実際のフロアはまた別にして、形として残されたものはほとんどなかったことからすれば、今回の企画はコールド・ウェイヴ〜テクノ〜フレンチ・ハウス、フレンチ・エレクトロといったムーヴメントを生み出し、独自のミュージック・シーンを発展させてきたフランスならではのアイデアと言えるかもしれない。

Klaus Nomi

知らぬはあなたノミ?

1944年にインメンシュタット(ドイツ南部のバイエルン州)に生まれ、かつての西ベルリンで育ったクラウス・シュペルバー(Klaus Sperber)は、オペラとロック・ミュージックが大好きだった。1972年にニューヨークに移住すると、最終的には現地のキャバレーのステージに芸術表現の場を見いだすことになる。彼のルックスと声にはニュー・ウェイヴ・シーンの王道が反映されており、アンディ・ウォーホルのファクトリー(ウォーホルのスタジオ)期以降のヴァイブを湛えていた。彼はマックス・カンザス・シティ(ニューヨークのナイト・クラブ兼レストラン)などの会場に、アンダーグラウンド・シーンの友人たちに囲まれて出演していた。1950年代のSF感にあふれ、モノクロの鋭角な衣装や類まれな声により独特の世界を築いた彼には次々と出演のオファーが舞い込んだが、キャリアが爆発的に飛躍したのはデヴィッド・ボウイとの出会いがきっかけだった。そしてクラウスはペルソナに磨きをかけ、全米ツアーに旅立っていった。

フランスのスター

1980年代の世界においてはレコード会社との契約がまだ至高の目標とされており、ステージは最終手段と考える向きが多かった。アルバムのプロモーションのためにツアーを行っていたのだ。そこでクラウスは有望なインディーズ系のメーカー(スピンディジー・ミュージック [Spindizzy Music])と契約した。そして彼らの可能性を認めたフランスRCAのアーティスティック・ディレクターたちの手助けにより、1981年9月に『オペラ・ロック』がリリースされた。 クラウスはプロモーションのためにフランスに滞在し、素晴らしい結果をもたらした。パリのファッション界はこの異才のパフォーマンスを観にル・パラスに殺到し、標準から外れようとする者を普段はいち早く火あぶりにするクラシック界ですら異論なく、彼を認めすらした。このファースト・アルバムは当時のプラチナ認定に相当する30万枚を売り上げる大ヒットとなった。(ヘンリー・パーセルの1611年のオペラ『アーサー王(King Arthur)』のアリアに基づいた)「ザ・コールド・ソング」のようなより”クラシック“な風合いのトラックがフランス人オーディエンスを最も惹きつけたことに、レーベルの関係者は大喜びだった。

Simple Man (Official Video)

シンプル・マン

2作目のアルバム『シンプル・マン』は1982年11月、ファースト・アルバムのフランスにおける成功の影響を受けたアメリカとドイツのマーケットでは特に、はるかにポジティヴな状況の中でリリースされた。道楽息子クラウスは母国に帰り、ようやくその才能を認められた。「シンプル・マン」や「フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン」といったシングルに押し上げられ、同作は世界的な成功を収めた。

Falling In Love Again (Official Video)

発疹

1982年、新しい病が大きく報道され、クラウスは自分の身体の発疹に気づくようになった。彼の最終診断が下されたのだ。何の治療法もない中、その結果は避けられなかった。1982年は始まりの年と誰もが思っていた反面、現実は終わりが近づいていたのだ。クラウス・ノミは1983年8月6日、衰弱によりニューヨークでこの世を去った。彼は作品に最期まで力を振り絞った。

ノミの今

クラウス・ノミの影響は今日も生き続けている。1980年代終わりのまばゆい時代よりは間違いなく散財的ではあるものの、ジャン・ポール・ゴルチエやジバンシィの一部の作品、さらにはレディー・ガガの衣装などに今も認めることができる。『アメリカン・ホラー・ストーリー:シーズン11』の主要キャラクターの1人を見るだけでも、誰かのことを思い出すだろう。広告の世界を見渡せば、彼の音楽が数え切れない国々の実にたくさんのキャンペーンにおいてシンクロされていることに気づくだろう。 クラウス・ノミは1980年代の初めにオーディエンスの心を掴んだ。そして40年後の今も、彼のオーラと声は私たちを魅了し続ける。ディスコグラフィーがオンラインにアップロードされ、再発、ビデオの復刻。2023年9月にはリミックス・アルバムも計画されており、この40年間ポップ界に比類なき存在であり続けたこのアーティストを発見する機会がたくさん出てくるだろう。

Klaus Nomi - Lightning Strikes (Official Video)