2018年の『ファイアーパワー』が全米・全英アルバム・チャート共に5位を記録するなど、英国ヘヴィ・メタル・レジェンドの凄みを満天下に見せつけて以来6年ぶり、そして2022年の「ロックの殿堂」入り後初となるオリジナル・アルバム『インヴィンシブル・シールド』。グレン、ロブ、リッチーの共同ソングライティングは前作以上の冴えを見せ、アンディ・スニープのプロデュースによってその鋼鉄美は極限まで最適化された。無敵感に満ちたオーラが寸分の隙もなく放射される新たな傑作、ここに誕生!
2011~12年の<エピタフ・ワールド・ツアー>からK.K.ダウニング(G)のポジションに座ることになったリッチー・フォークナーの加入によって、躍動感や突進力といったアグレッシヴな機動力を再び取り戻したジューダス・プリースト。この時期、ロブ・ハルフォード(Vo)がよくステージで口にするフレーズ、“ジューダス・プリースト流ヘヴィ・メタル”の真髄を改めてバンドは確認し合い、それをアルバムに投影したのが2014年の前々作『贖罪の化身』(Redeemer of Souls)だった。当然のごとく世界中のプリースト・ファンは歓迎し、全米チャート6位というその時点でのキャリア最高位を記録した。バンドはそのツアーのハイライトとなった世界最大級のメタル・フェス<ヴァッケン・オープン・エア 2015>でのヘッドライナー公演をライヴ作品として翌年発表している。
『贖罪の化身』で確かな手応えを得たバンドは、さらに自分達の強みを簡潔かつストレートに表現すべく楽曲を研磨し、スピード感とエッジの効きまくった現代的なサウンドで挑んだのが2018年の『ファイアーパワー』(Firepower)である。この作品は、00年代以降のヘヴィ・メタル界随一のプロデューサー/エンジニアとして知られるアンディ・スニープと、バンドの80年代の全スタジオ作のプロデュースを手掛けたトム・アロムの共同プロデュースという、ファンの期待感を一層膨らませる布陣で制作された。その結果、バンドにとって初となる全米・全英両チャートでの同時トップ5入り(全米でのキャリア最高位の更新、全英では1980年の6thアルバム『ブリティッシュ・スティール』の4位に次ぐ記録)を果たす大きな成功を収めた。その<ファイアーパワー・ツアー>では、パーキンソン病の影響でツアー参加が困難となってしまったグレン・ティプトン(G)の代役を、かつてスラッシュ・メタル・バンドのギタリストでもあったプロデューサーのアンディ・スニープが務めるという離れ業でその難局を切り抜け、今日に至っている。2021年には結成50周年を祝う42CD入りのマンモス級ボックス・セット『50 Heavy Metal Years of Music』を発売。さらに2022年には「ロックの殿堂」入りを果たした。
そして、デビュー50周年という大きな節目の年を迎え、6年ぶりに発表するオリジナル・アルバムが本作『インヴィンシブル・シールド』(Invincible Shield)である。今作もアンディ・スニープがプロデュース、レコーディング、ミキシング、マスタリングと全てを手掛け、盟友トム・アロムも共同プロデューサーとして2曲に参加している。“無敵の楯”と名付けられたこのアルバムは、1990年の名盤『ペインキラー』(Painkiller)以来のインテンシティを湛えたとんでもないスケール感と爆発力を持ち、メロディーやギター・ワークには全時代のファンを唸らせるであろう多彩なアイディアが散りばめられている。特にメタル・ゴッド=ロブ・ハルフォード(8月で73歳!)の天空を切り裂く“神シャウト”は、むしろ若返ったような驚異的な咆哮を轟かせる。50年の歴史の重みと現役バンドとして自らをアップデートし続ける事への並々ならぬプライドが充満し、無敵感に満ちたオーラが寸分の隙もなく放射された新たな傑作の誕生である。