渋谷区文化総合センター大和田内さくらホール 19:00開演
夏恒例、「渋谷に福来たる」のスペシャルは、「桃月庵白酒師匠25周年記念落語会的な」と銘打って。共に会を彩ったのは先輩の三遊亭白鳥師匠、林家彦いち師匠、後輩の春風亭一之輔師匠という、いずれ劣らぬ人気者ばかりとあって、23日の東京・渋谷のさくらホールは完売御礼。高座に、ロビーに趣向があり、会場はお祝いムードに包まれた。
会の冒頭は、真打昇進や襲名披露ではおなじみの、まさかの口上。緞帳が上がると、4師匠が紋付き袴姿で高座に並ぶ壮観に、客席からはざわめきとともに、大きな拍手が起こった。
口上の司会は一之輔師匠。共に鹿児島出身という同郷の彦いち師匠が、若手時代に共に会をした思い出を交えながら、「聞き上手」と持ち上げたかと思えば、白鳥師匠は、白酒師匠の創作珍ネタを“暴露”するなど、すっかり白鳥ペースに巻き込んだ。和気あいあいとした口上に、客席も爆笑に次ぐ爆笑。最後は会場をバックに4師匠の記念撮影、そして全員で手締めで口上を締めくくった。
気を取り直し、まず高座にあがったのは一之輔師匠。「代書屋のもうかった日も同じ顔」と、定番の川柳を振りながらネタへ。眉間にしわを寄せ、気むずかしそうな代書屋と、ちょっと頭のねじがゆるんだ吉公の対称が鮮やか。次第に吉公のペースに巻き込まれていくさまも、くっきりと浮かび上がった。
中入り前は白鳥師匠の「黄昏のライバル~白酒編~」。人間国宝になった白酒が戦意喪失しているところに、かつてのライバルで、今は池袋のおでん屋のおやじ、白鳥が現れて・・・。落語家が実名で飛び出すなどちょっとヒヤヒヤするところもまた、白鳥ワールドならでは。いかにもこの師匠らしい変化球のエールが、しっかり白酒師匠にも届いたに違いない。
中入りをはさんで、彦いち師匠は、いつものように舞台袖から颯爽と登場し、パワー全開の「熱血怪談部」へ。完成度が増した噺は、彦いちのニンが見事に生きている。登場するさまざまな幽霊やお化けたちの、愛嬌たっぷりの造形も楽しい。
トリを締めくくったのは芸歴25周年を迎えた白酒師匠の「井戸の茶碗」。さわやかな口跡でテンポよく、武士から紙屑屋まで、それぞれの思惑を鮮やかに演じ分け、心地よい笑いを誘う。最後に浪人の千代田占斎の娘お絹が、若き武士高木作左衛門に嫁入りする運びになるところも、互いに一目惚れしていたとすることで違和感が薄れ、さらにもう一つ笑いを生んだ。
ロビーでは、白酒師匠の等身大のパネルも展示され、一緒に記念撮影するなど、大いに盛り上がる光景も見られた。
濱田元子(毎日新聞)