河島英五&河島亜奈睦 Self and Cover 2016 〜生きてりゃいいさ〜

『セルフ・アンド・カバー2016〜生きてりゃいいさ〜』完成記念 河島亜奈睦 OTONANO独占インタビュー
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—今回のアルバムの構想はいつ頃から?

カバー・アルバムを出したいなというのは数年前から思ってたんですけど、父との2枚組にしようと思ったのはソニーに電話する数分前(笑)。仮想デュエットも1曲はしたいと思ってて、「生きてりゃいいさ」に決めたのもつい最近です。

—マスタリングで改めて英五さんの曲に向き合って、新たな発見はありましたか?

いっぱいありましたね。内臓を掴まれるというか、心から心に届くというか、ここまで真剣に父がレコーディングに向き合っていたのかと感じました。今までは、そっと言葉を置くように歌ってるのかなと思っていた「生きてりゃいいさ」も、同じように歌っても全然父に敵わない。自分はまだまだ形に捉われていて、父との距離感は大きく、やっぱり父は凄かった。カバーでも一貫して自分なりの表現をしようと思ってきたんですけど、歌の力強さ、情熱はなかなか真似できるものではないなと思いました。でもスタートラインには立てたんじゃないかと思います。

—英五さんの最初の記憶は?

怖いお父さんでしたね。私だけよく怒られた。しかも旅ばかりで、たまに帰ってきては厳しく言ってくるおっちゃん、というのが4〜5才頃の記憶です。河島家のきょうだいが大きくなり始めて、母が父のコンサートに連れていってくれるようになってからは、1ファンであったように思います。コンサートの終盤に「みんな立てや!前においでや!」って言われると私達もワーっと行ってましたね。

—英五さんの一番印象深い思い出は?

えーっ、いっぱいありすぎます……子供と対等に接してくれたことですかね。優しくしてくれないというか、トランプのババ抜きでも真剣勝負、手加減なしで、ちょっとズルしてでも勝つみたいな。あと、母とはすごく仲良しでしたね。河島家の店でイベントやった時も、皆の前で平気でキスしたり、かわいらしい部分もありました。そういう話を世のお父様方にすると、「いや、そんな話聞きたくない!」って言われて。皆さんの“河島英五像”に反するんでしょうね。とにかくいろんな表情を見せてくれました。父が亡くなってから、『これやったらお父さん怒るんちゃうか』って自分で勝手に決めつけてたなと思います。「偉大なお父さん」というイメージを勝手に作り過ぎてたなと。「時代おくれ」の歌のイメージもあったのかな?

—一番好きな・思い入れのある英五さんの曲は?

やはり「生きてりゃいいさ」ですね。長年歌えなかった曲で、それぐらい大事な曲というのは薄々感じつつも、自分の中では父の死を受け入れられなくて、愛されていたのを感じたくなかった、気持ちにフタをしてたところがあるかもしれない。寂しさに酔いしれたいみたいな。でも曇りガラスを拭き取ってみると父も皆も応援してくれていたんだと、今やっと感じられています。

—亜奈睦さん自身の音楽人生はどこから始まったと思いますか?

最初は3〜4才、ウクレレ持って「お尻をペンペンするぞ」っていうオリジナル曲を作って(笑)いとことかの前で披露してましたね。小さい頃からピアノは習っていたけど好きじゃなくて。歌うのは好きで、小学校低学年の時に町のカラオケ大会で演歌を歌って優勝しました。父の曲を歌い出したのは14歳ぐらいの時、父に誘われてからですね。やっぱり、ずっと聴いてきたので身体が覚えてますね。あと、私が小学生の時に、父が家で「レット・イット・ビー」なんかをピアノで練習してて。だから学校の給食の時間に「レット・イット・ビー」が流れると、「これお父さんの曲!」(笑)って自慢してましたね。

—今回ジャケット画を担当している谷口智則氏との関わりは?

市役所で谷口さんの絵の入ったポスターを見て、同じ町にこんな方がいるんだ、と思って。丁度その時『まる・まる・はじまる』という母子をテーマにしたアルバムを作っていて、ジャケットのイラストをお願いしてからのご縁です。谷口さんは直接父のことは知らないんですけど、一緒に各地でライブペインティングと歌のイベントをやっている時に父の曲も聴いて、父の存在も近くに感じてくれているのかなと。今回のアルバムの絵をお願いした時は、いつもはすぐに描いてくれるんですけど、1か月ぐらい連絡がなくて、大丈夫かなあと思って「父も応援してくれてると思いますよ」と奥さん経由で伝えたら、その夜に「英五さんが降りてきたような気がします」ってこの絵が届いたんですよ。谷口さんも、河島英五の絵を描くことにどこかプレッシャーを感じていたのかもしれないです。だけど父が「頑張れ。俺が選んだ」って肩を叩いてくれるような感覚があったみたいですね。その瞬間にババッと描けたと。

—今回、娘のあいるらちゃんがレコーディング・デビューを果たしますね。

ギターも少し弾くんですよ。握力も強いんで。今は歌一本で十分みたいですね。とにかくパワフルなのは英五似?

—命日の4月16日のライブ・イベントはどんな内容になるのでしょうか?

折角命日にライブができるということで、映像でも父の姿を楽しんでもらえるし、その日は私も父に身体をあずけて、一心同体で臨みたい。この日は普段の私よりも熱くなると思います。熱い父のライブが好きだった方にも楽しんでいただけるように。最後はみんなスタンディングで盛り上がりたい。お客さんも体を鍛えといてほしい。ストレッチとかお忘れなく(笑)。

—ファンへのメッセージをお願いします。

なんとも面白いCDを出したもんだなあ、自分でも良くやったと感心してます。父が亡くなって15年、「酒と泪」は知ってるけれど、どんな人だったかというのを知らない方も増えてきましたが、人を勇気づけ励ます曲、私自身も励まされた曲がいっぱい入ってます。そんな曲を父と私の声を通して沢山の方にお届けできればいいなと思います。

(2016年2月5日・談)