2016年7月3日、ロンドンのハイド・パークで行われた、キャロル・キングの不朽の大名盤『つづれおり』の全曲再現ライヴの模様を完全収録したファン感涙の音源&映像(CD+DVD)の日本盤がいよいよ9月27日に発売される。また、日本独自企画の『つづれおり』のアナログ盤、7インチ紙ジャケSACDマルチ・ハイブリッド盤『つづれおり』も同時発売される。
『つづれおり:ライヴ・イン・ハイド・パーク』は、2016年7月3日に、ロンドンのハイド・パークで行われた『つづれおり』45周年を記念したコンサートの模様を収めたもので、『つづれおり』を史上初めて全曲演奏し、それに加えて、彼女の作品の中から人気の楽曲を収録。当日は65,000人以上もの熱狂的なオーディエンスが集まった。
伝説となった1973年のセントラル・パーク公演以来の大規模なコンサートとなった、このハイド・パークでの歴史的なパフォーマンスは、彼女にとって1989年以来初の英国公演となったと同時に『つづれおり』を全曲ステージ上で披露した初めての経験となった。ステージではキャロルがフル編成のバンドを率いる姿が見られるほか、彼女の圧巻の楽曲群から自身のお気に入りの楽曲も数曲披露されている。『つづれおり』オリジナル盤に参加したギタリスト、ダニー・“クーチ”・コーチマーがバンド・メンバーとして名を連ね、ゲストとしてキャロルの娘ルイーズ・ゴフィンが「地の果てまでも」(人気テレビシリーズ『ギルモア・ガールズ』のテーマ曲として、母娘デュオが再録音した曲)などをキャロルと共演。ローレンス・オリヴィエ賞を受賞した『ビューティフル:キャロル・キング・ミュージカル』のウエスト・エンド版のキャストたちが参加している。
ポップ・カルチャーという生地に文字通り織り込まれた『つづれおり』は全世界の琴線に触れ、ビルボード・アルバム・チャートで15週間に亘って1位を記録(1971年度全米年間2位/1972年度全米年間2位)、6年間チャートに留まったという大ヒット・アルバム。また、キャロル・キングはこのアルバムで、グラミー賞の最優秀アルバム賞、最優秀レコード賞(「イッツ・トゥー・レイト」)、最優秀楽曲賞(「君の友だち」)を含む4部門を受賞。「ソー・ファー・アウェイ」「イッツ・トゥー・レイト」「アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ」「君の友だち」をはじめ、今も時代を超えるスタンダードとして歌い継がれている楽曲が数多く詰まった、まさにロック・ポップス史上の残る大名盤。
収録曲
収録曲
収録曲
CAROLE KINGキャロル・キング
1942年2月9日NY生まれ。60年代にはソング・ライターとして活躍。ジェリー・ゴフィンとのコンビで 「ロコモーション」、「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」、「ワン・ファイン・デイ」など、後々まで歌い継がれている数々の作品を生み出す。’60年から’63年にかけての3年間で、このコンビで延べ20曲あまりの全米トップ40ヒットを世 に送り出す。’62年にはソロでシングルを、’68年にはシティというバンドでアルバムをそれぞれ1作品リリース。’70年に『ライター』であらためて、ソロ・デビュー。翌’71年発表された『つづれおり』は世界的な大ヒットとなり、女性シンガー・ソングライターの第一者としての名声を獲得。以後も数々の名盤をリリース。75歳となった現在でも、マイペースながら、活動を続けている。
2010年4月14日・日本武道館。今も記憶に鮮明なキャロル・キングとジェイムス・テイラーの奇跡の来日公演。女性シンガーソングライターの最高峰と、そのシンガーソングライター時代の幕開けを告げた男が同じステージに立つあまりにもスリリングで、飛び切り贅沢な時間だった。主人公たちをバックで支えるメンバーがダニー・コーチマー(ギター)、ラス・カンケル(ドラムス)……この事実だけで往年のリスナーは感涙だったが、その“夢の共演”は、40年前から始まっていた。
世界はロックで変革すると熱い連帯意識を持った激動の60年代は、ビートルズの解散、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソンらの相次ぐ死によってあっけなく幕が降ろされた。70年代はその反動とも言うべきパーソナルな響きがリスナーの心に浸透する空気のなかで始まった。内省的な言葉が繊細なメロディをなぞり、多くの優れたシンガーソングライターが、この時期に後世に残る楽曲を次々と誕生させた。なかでも1971年夏に全米シングルチャートのトップまで登り詰めたジェイムス・テイラーの「きみの友だち」は、珠玉の“名唱”と言われて久しい。作者はキャロル・キング。歴史的名作『つづれおり』の収録曲だった。
全米セールス1000万枚(全世界2500万枚)の当時の女性最高記録を打ち立てた大ベストセラー。キャロル・キングが、その『つづれおり』を製作していたのは、ジェイムス・テイラーの出世作『スウィート・ベイビー・ジェイムス』(シンガーソングライター時代の幕明け曲と言われる「ファイヤー・アンド・レイン」収録)をレコーディング中のスタジオから数ブロック離れたところだった。共通の知人だったダニー・コーチマーを通じてふたりは昔から友人だったため、キャロルはピアノで、ジャイムスはギターでそれぞれお互いのアルバムに参加した。意気投合したふたりは1971年春に全米27都市をまわるツアーを行い、ジェイムスは次作『マッド・スライド・スリム』の中で「きみの友だち」をカヴァーした。“私(僕)の名前を呼ぶだけでいい/そしたらどこにいてもすぐに走って行くから/きみの友だちだから──”。
「クーチ(ダニー・コーチマー)が僕らを引き合わせたのは1969年、(職業ライターだった)彼女が自作の曲を自ら歌い始めた頃だった。僕らは一緒にレコーディングし、一緒にツアーし、ひとつのバンドをともに率い、行動を共にした。彼女は僕に唯一のナンバーシングルをもたらしてくれた。それはローレルキャニオンでの素晴らしい日々だった。ジョニ(ミッチェル)、ジャクソン(ブラウン)、CSNY、イーグルス、そしてキャロル・キング──非凡な才能がひしめきあっていた。レコード会社は利益を2の次にし、善意で音楽を提供していた。最高だった。僕らは笑い、泣き、生きて、死んでいった……」。1999年に新装再発された『つづれおり』に寄せたジェイムス・テイラーのコメントは、時代を共有してきた往年のファンの目頭を熱くさせた。
70年代当時の空気を知らなくても、キャロルとジェイムスの曲は、普遍的な魅力を放ち続け世代にとらわれることなく多くのリスナーから支持されている。それは、時代も言葉も超えた世界共通の「愛」「友情」「死」など誰もが直面するあまりにもシンプルな内容を歌い続けているからだ。優しい歌声に寄り添う楽器たちの音は、昔も今も常に秀逸。数ある“名曲誕生物語”のなかでもこのストーリーが特別な輝きを放っているのは、それぞれ離婚、再婚を繰り返しながらも、結果的にキャロルとジェイムスは男女の恋愛関係にはならなかったからだとも言われている。主人公たちが本当に“友だち”のまま半世紀の時を超えようとしている──You’ve Got A Friend.
文/安川達也(otonano編集部)