ワイヨリカ
オフィシャル・インタビュー
解散を伝えた時の悲しい涙を、うれし泣きの涙に変えたかった
── 再結成のニュースの反響はどんなものでしたか?
Azumi 想像以上でした。ここまでみんなが喜んでくれるとは思っていなかったのですごく嬉しかったです。とくに、「ありがとう」と言われることが多くて、ちょっと戸惑いました(笑)。
── 今回はどのような経緯で再結成となったのでしょうか。
Azumi 結成20周年ということもありますが、なによりも2013年に解散をするときに、ファンの方に対して最後の音源も渡すことができなかったことや、ラストライブができなかったことがふたりのなかで心残りだったんです。その後、お互いがソロ活動をするなかで、20周年という節目を目前に、“何かできないかな”と思い、再結成となりました。
so-to 解散をして、時間を重ねることで、当時のワイヨリカのファンの方たちは、結婚をして出産をしたりと、環境ががらりと変わっていく方が多かったんです。でも、さらに時を経て、子育ても落ち着いたような方たちから、「またライブに行きたいんですが、ワイヨリカは活動しませんか?」というメッセージを頂くことが増えていて、いつかできたらいいなとは思っていたんです。なので、20周年という節目は再結成にすごくいいタイミングだったように思います。
── だからこそ、「ありがとう」と言われることが多いのかもしれないですね。
Azumi そう思ってもらえるのは、すごく嬉しいですね。当時、解散を伝えたのは私のソロライブだったんです。それまでは私たちの曲に感動してポロポロ泣いてくれた人たちの涙や笑顔はたくさん見ていたんですが、その時は初めてファンの方の“泣き声”を聞いたんですよね。それが本当に辛くて…。いつか、その涙をうれし泣きにできないかなということをずっと思っていたので、今回、みなさんに喜んでもらえたのなら、本当に再結成を選んでよかったなと思います。
── そして、最初に届けられる新曲が、『Beautiful Surprise』という素敵なタイトルで感動しました。久しぶりに一緒に楽曲を制作して、どんなことを想いましたか?
Azumi 最初はどうしていいかわからなかったよね。
so-to そうだね。いま、ワイヨリカとして求められているのがどういった楽曲なのか、その実態をつかむのに少し時間がかかったんです。ソロ活動の間に、お互い違うジャンルのことをやっていたこともあったし、なによりワイヨリカの音楽って、削いでいる部分が多いので、より難しいんです。ソロでやっている音楽は、音を全く削がずにあえて変なことをやろうとしていたので、歌が聞こえた瞬間、パッと花が咲くような音楽をあらためて作るのはすごく難しかったんです。でも、いざ完成したときに、エンジニアのスタッフが「ワイヨリカが帰ってきた感じだ!」って言ってくれたんですよ。それがすごく嬉しかったですね。
Azumi じつは、この曲に決まるまでアルバム1枚分くらい曲を作ったんです。そこまで迷ったのは、昔と全然違うことはできないし、やるべきではないとも思ったんですよね。だって、それはみんなが待っているワイヨリカではないから。とはいえ、単純なものを作るのではなく、みんなのワイヨリカ+αで、私たちがこれまでソロでやってきたものをのせたいと思ったんです。
Beautiful Surprise/OneRoom
2019.7.31 release
── 歌詞に関しても悩みましたか?
Azumi so-toくんから何曲か曲が上がってきたときに、すでにこの『Beautiful Surprise』というタイトルがついていたんです。そのイントロを聞いた瞬間に、これだという確信があったし、なによりこの言葉が私たちの言うべきことだなということを感じました。この言葉を中心に、あらためてみんなに何かを届けたいという気持ちになったので、so-toくんの言葉選びはさすがだなって思いましたね。
── 今作の作詞はAzumiさんになっていますが、歌詞についてもおふたりで話し合ったんですか?
Azumi 昔から曲についてはあまり話し合ったりせずに、お互い持ち寄ってくる流れがあったんですが、今回は久しぶりということもって、ちゃんとお酒を交わしながら突っ込んだ話をたくさんできたんです。
so-to そこで、震災があって、解散をして、それぞれが別の道にやってきたことが上手く音や歌詞にでたらいなって思ったんです。でも僕は表に出るタイプではないので、あくまでも音楽として小説を読むような感覚で聞いてもらえたらいいなと思っているんです。だからこそ、この曲に関しては起承転結をしっかりとつけて、最後はしんみりするように仕上げました。実は映画音楽の勉強もしていたので、その要素も含められたらなと思ったんです。
Azumi メッセージとしても、ファンへの想いも込めたのはもちろん、ちょっとした遊び心もいれたりしたんですよ。
── “もう二度と間違えないよ”って、『さあいこう』の“もう二度と間違えないように”とかけてあって、当時のファン代表としてはすごく胸が熱くなりました。
Azumi 気づいてもらえてうれしいです。そのように、聴いてくださる方の心をつかめる瞬間を作りたいですし、私はボーカルなので、歌い出しを聴いて、皆さんからも“ワイヨリカが帰ってきたね”って思ってもらえたら最高ですね。
so-toのギターとメロディ、Azumiの歌があればワイヨリカになる
── 『OneRoom』についても聞かせてください。
so-to 僕はR&Bが好きなので、今の日本のJ-POPのなかにあるR&Bシーンで絶対にやりたいと思っていたんですよ。メロディも試行錯誤して、いろんなパターンを作ったんですけど、結局最初の形に戻りました。ちょっと考えすぎて、J-POPみたいにしない方がいいかと思っていたんですけど、なんか違ったんですよ。
Azumi でも、この形が一番良かったよ。
so-to それならよかった(笑)。
── そのアレンジもそうですが、当時ならできなかったことが今できると思ったことはありましたか?
Azumi 単純に、昔に比べて、余力があるなと思いましたね。作詞も、歌に関しても、気持ちに余裕を持った状態でできたんです。昔は“超絶ナーバス・ピリ子”だったよね(笑)。
so-to うん(笑)。
Azumi so-toくんが、ボーカルレコーディングが終わったあとに、“もうベテランだね”ってぽろっと言ったんですよ(笑)。自分で許せる範囲が増えたのかもしれないですね。私の歌を聴いて穏やかだと言ってくれる方もいるんですが、制作やライブは穏やかだけじゃダメなんですよね。でも今回はお互い、いい意味で「このくらいで大丈夫じゃない?」という余力のラインがあったのですごく気持ちよくできたんです。
── どんなお仕事でも経験を重ねることで自分の中の視野が広がりますからね。それをあらためて感じたのかもしれないですね。
Azumi そうですね。昔の比較対象があるからこそ、お互いの力の付き具合や、抜け具合を含め、本当にいいものを持って帰ってこれたように思います。
── ワイヨリカの芯をすごく大事にされていると思うのですが、それはどんな共通認識があるのでしょうか。
Azumi so-toくんのギターとメロディ、それと私の歌があればワイヨリカになるという絶対的な自信があるので、そのうえでどんな曲を持っていこうかというのに悩みましたね。
so-to 最初に作ったやつは、完全に売れようとしてたもんね。流行の音楽にして、すぐにボツになった(笑)。
Azumi もうぜんぜんワイヨリカじゃなかったもん(笑)。聴いたときに、“どうしよう!”って思ったからね!
── あはは。さて、3曲目となる『Beep-Beep-Beep』は、どのような曲になりました?
Azumi ライブでふざけられる曲です(笑)。私たちって、アルバムの中に必ず1曲はそういった曲を入れてきたんですよ。あらためて、肩の力をぐっと抜いてできた曲になりました。歌詞なんて30分くらいで書けちゃったもんね(笑)。この曲は、フォルクスワーゲンの曲です(笑)。
so-to そうそう(笑)。僕の実家に、坂道を上るときに原付にさえ抜かされるボロボロのフォルクスワーゲンがあったんです。それを思い出して書いたんですが、そもそも僕には免許がないのでよくわからなくて(笑)。
Azumi なので、so-toくんの仮歌詞は、ただ“フォルクスワーゲンに乗ってるよ”という曲だったんです(笑)。でも私が書き上げた歌詞に対して何もコメントなかったよね。
── 以前はよくディスカッションをしていたんですか?
Azumi ディスカッションばかりしていました。私は東京に出てきて、初めて歌詞を書き始めたから、昔から書いてるso-toくんとは経験値が違うんですよ。so-toくんの歌詞は本当に素晴らしいから、ワイヨリカを通して歌詞を勉強していたんです。だからこそso-toくんの歌詞のOKラインもかなり高くて、いつも泣きながら、吐きながら歌詞を書いていたんです。当時は、競争も激しいし、忙しいからこそ、かなり自分の限界との勝負だったところもあるんですよ。その経験があるからこそ、今回何も言われずに合格したのは拍子抜けでした(笑)。
so-to もちろん、そこに成長を感じたのはありますが、読んだ歌詞は全部すごく面白かったんですよ。僕から言うことは何もないです!
── この3曲をもっての再結成になりますが、ワイヨリカの音楽は普遍的だからこそ、今の若い世代にもしっかりと響くと思うんです。
Azumi 響いてくれたら嬉しいですね。
so-to せっかくだから売れてやろう!
Azumi 今日イチ力強い言葉だね(笑)。
── あはは。さて、これらの新曲は、ベストアルバムの中に収録されますが、これらの曲をセレクトをするのも本当に大変な作業だったのではないのでしょうか。
Azumi まず、シングルは全部入れようという話になりました。あとは自分達が入れたい曲を選びました。so-toくんが『goodbye summer』を選んだのはビックリした!
so-to これ、めちゃくちゃいい曲じゃない!?
Beautiful Surprise ~Best Selection 1999-2019~
2019.8.7 release
Azumi うん。アルバムの中で、この曲がすごくいい働きをしてるからね。一気に景色が変わるので、すごく良くできた曲だと思いました。
so-to Azumiちゃんが選んだ「逢いたいから」は、完全に俺は忘れていて(笑)。
Azumi え~! この曲大好きなんだよね。歌詞も、締め切りがかなりギリギリの状態で一晩で作らなくちゃいけなかったんですよ。そこでシャワーに入りながら考えてたら閃いて、びしょびしょのまま書いたのを覚えてます(笑)。でも、そうやって作った曲って、悩みながら作ったのとはまったく違う魅力があるんですよ。
── シングル曲で印象的な曲はありますか?
Azumi 全部!
so-to あはは。『スパークル』はいい曲だよね。
Azumi うん。この曲はファンの方から、「この曲で救われました」って言われる事が多くて、すごく不思議な力があるんだなって思った覚えがある。
so-to あと、去年のAzumiちゃんのライブで『恋の幻』を歌ってたでしょ? あれすごいいい曲だなって思ってたら、サビで“これ、オレが作った曲か!?”って思って(笑)。
Azumi あはは。そうだよ(笑)。
── ラストは『悲しいわがまま』をあらためて録音したアコースティックバージョンになりますが、なぜこの曲を選んだのでしょうか。
Azumi 『さあいこう』と迷ったんですけど、私たちのきっかけとなった曲でもあるし、それを今の自分たちが一発録りでスタジオセッションをするというのがすごく美しい形かなって思ったんです。でも、やればやるほど緊張したよね。
so-to イントロがすごく緊張するんですよ。レコーディングをしたあと、必死にやるからこそ手が疲れてきて終わりは限界の感じがよく出ているんです(笑)。
── 2曲目が『悲しいわがまま』ですからね。それがループすればまた聞き比べられるのも面白いですよね。
Azumi わ、それは怖い!(笑)
── あはは。さて、ライブも控えていますが、どんなライブになりそうですか?
so-to 全部メドレーとか?
Azumi 息つく暇もない!(笑) でも、みなさんが喜んでもらえるような形にしたいと思っています。今後は、ファンの皆さんに対して「ありがとう」を伝えるツアーになると思うのですが、初めて聴く方にも届くように活動ができたらいいなと思っています。
取材・文/吉田可奈
ワイヨリカ(Wyolica)
北海道札幌市出身のAzumi(vo)と
大阪府出身のso-to(池宮創人)(g,programming)による
2人組音楽グループ。
名前はネイティヴ・アメリカンの言葉を用いた造語で“草原の民”の意。
それぞれに活動していた二人がオーディションを機に出会い、大沢伸一プロデュースとして
99年5月にシングル「悲しいわがまま」でデビュー。
ブラック・ミュージックを軸に、切ない歌詞や洒落たセンスとポップ感覚を合わせた
爽やかで甘酸っぱいサウンドで人気を博す。
2013年5月の正式解散発表後は、それぞれソロで活躍していたが、
デビュー20周年を期に再結成を発表した。
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