楳図かずお『闇のアルバム』

楳図かずお『闇のアルバム』

衝撃とロマンでつづる 人気漫画家・楳図かずお自作自演集!

楳図かずお(マンガ家・芸術家)が1975年に発表したソロ・アルバム『闇のアルバム/楳図かずお作品集』の再アナログ化! 作詞・作曲・歌唱・ジャケットイラストレーションのすべてを楳図かずお本人が手掛けた、まさにオール自作自演の作品集。自身の漫画と同タイトルの曲名としながらも、別の視点から制作された楽曲は、聴く者の心に深い爪あとを残す作品となっている。

楳図かずお『闇のアルバム』

©楳図かずお

【完全生産限定盤】
『闇のアルバム/楳図かずお作品集』

作詞・作曲・歌唱:楳図かずお
ジャケットイラストレーション:楳図かずお

(水)発売
価格 : 4,070円(税込)
品番 : MHJL-258
発売 : ソニー・ミュージックレーベルズ
◎ピンナップ封入

  • SIDE A
    1. 洗礼
    2. イアラ
    3. へび少女
    4. 蝶の墓
    5. おろち
  • SIDE B
    1. 闇のアルバム
    2. おとぎ話のヨコハマ
    3. アゲイン
    4. 漂流教室
    5. 森の唄
楳図かずお『闇のアルバム』
楳図かずお

僕はこの『闇のアルバム』が歌に関する第一歩だったので、そういう意味でも記念すべきアルバムなんです。
なぜCBSソニーでレコードを出して頂くことになったかというと、当時、漫画の仕事が忙しくて、週刊3本、月刊3本で2日に1本ずつやらないと間に合わないスケジュールで執筆していたんですが、もうこのままだと死んじゃうと思ったので、週刊1本と隔週1本だけに絞ったんです。
そうしたら言い方はよくないけど「すごい暇だなー」って感覚になってしまって……(笑)。
「さあ、どうしようか? そうだ、1日に1曲ずつ作詞しよう!」と思いついたんです。
僕、歌が好きなもので、その頃も仕事の合間にレコードを買って歌ってばかりいました。
そんな流れで、まず作詞を始めたんです。
毎日1曲ずつ作詞をしていたらそのうち行き詰まりますね、当然ね。
そうしたら今度は「そうだ、これに曲をつけてみよう!」と思いつきました。
「毎日1曲ずつやってみよう!」と作曲しているうちに、それも作り飽きちゃった。次は「そうだ、1曲ずつ毎日歌って吹き込もう!」と。
そんな流れで、いつの間にか自作のオリジナルの曲を歌ってましたね。

ラジカセを譜面台のところに置いて、自分でピアノを弾きながら歌ってテープに録りました。
そして「これどうしよう? そうだ、レコード会社に売り込もう!」と思って。
レコード会社の事情なんて全然知らない頃だから、持ち込むならヒットメーカーのところへ持ち込もうと考えて、ランキングを見ると、ドーンと上の方に売れている歌手ばかり担当している人がいて。
郷ひろみさんとか山口百恵さんとか南沙織さんとかね。
その人が酒井政利さんだったんですよ。

酒井さんがどういう立場の人なのかとか、全く知識がないまま、デモテープを担当編集者に持ち込んでもらいました。
すぐに返事がきて「曲にドラムを足して、社内放送でかけていますよ」と。
僕はピアノ1本で弾いているから、まあ音が単純だったのかなと思いますが。
そんなこんなで、しばらくして「レコードを出しましょう」と連絡が来ました。
それとレコードにするのは、持ち込んだ曲じゃなくて描いている漫画のテーマソングみたいな曲をやってくださいとリクエストがありました。

その頃僕は『洗礼』という漫画を描いている最中で、その他に『漂流教室』『イアラ』『闇のアルバム』など漫画作品をイメージした曲を書きました。
漫画をモチーフにしていない曲は『おとぎ話のヨコハマ』ですね。
アルバムタイトルは、当時ビッグコミックで連載していた『闇のアルバム』からつけました。

レコーディングの時は、先にカラオケがあがってきて、3ヶ月間くらい練習の時間をもらって録音に入りました。
しっかり稽古をしたので『へび少女』は一発でOKいただきましたよ。
他もそんなに録り直しはなかったかと思います。
3ヶ月間の稽古はしっかり効果があったと思うんですよね。

中でも『へび少女』は大変気に入っていて、最近までステージでもずっと歌っていました。
他も、どれもいい曲だと思いますけど、僕の一番お気に入りの一番は、やはり『へび少女』です。
曲調がエキゾチックな雰囲気なのですが、自然にできてしまいましたね。
でも『へび少女』は歌詞もすごくいいっていう。
ファンの中でも、好きな方が多いです。
“誰も心に へびを一匹飼っていて そいつが眼を覚ます”……
そういうことってね、あるだろうなと。
当時、僕の中に創造性がぎっしりと溜まっていて、それが浮き出てきた、としか言いようがないんですけどね。

『おとぎ話のヨコハマ』も、横浜っていったら赤い靴でしょ。
それに負けない歌を作りたいなと思って。
むこうは、赤い靴。
僕はアンデルセンの「マッチ売りの少女」で対抗したつもり。
まさに、おとぎ話。
それから冒頭の前奏の中に、中華街をイメージしたと見られる中国音階が「チラッ」と出てきますよ!! 聞き取ってね。
アレンジの高田弘さん、すごいですよね!!

「おろち」も絵を見ながら聴いてもらうと、『おろち(漫画)』に対する新しい印象が生まれる気がする。 レコードの中に、『おろち』のピンナップも入ってますからね。
だけど『おろち』でない人のイメージで作った曲なので『おろち』が主人公の歌じゃないんです。
別の人が見た『おろち』です。

CDもいいけれど、やっぱりアナログの持っている現実感がいいですよね。
目の前で針がザーッと溝を擦って
いつかこのアナログレコードの溝もかすれてしまうんだろうなー…と考えたり
そんな緊張感を持ちつつ、ゆっくりコーヒーでも飲みながら聴くと、めちゃくちゃ充実感があると思います。

曲のタイトルは「おろち」なり「漂流教室」なり、作品名からとってはいるけれど
漫画とは違った角度や解釈で楽しめる曲になっていると思います。
その辺が聴きどころですね。

ジャケットもぜひ、楽しんでもらいたいですね。
絵を見ながら、それも音楽を盛り立てる大きな要素の1つになると思います。
最近の音楽は、手軽な作りになっていますよね。
でも絵はやっぱりそんなに手軽にはいきませんので。

楳図かずお『闇のアルバム』