このアルバムは全体を通じて良いこと、悪いこと、
紛れもなく醜いことが浮かび上がりつつも、
愛、尊敬、 優しさといった要素が散りばめられている
—イアン・アンダーソン
ザ・ゼロット・ジーン/
ジェスロ・タル
THE ZEALOT GENE / JETHRO TULL
2022月1月28日 全世界同時発売
英プログレッシヴ・ロック界の
重鎮ジェスロ・タル。
約18年ぶりとなる新作スタジオ・アルバム
『ザ・ゼロット・ジーン』。
2022年1月28日(金)に全世界同時発売!
1968年にアルバム『日曜日の印象』でデビュー。1969年にリリースした2ndアルバム『スタンド・アップ』が全英1位を獲得。『ジェラルドの汚れなき世界』(‘72年)『パッション・プレイ』(’73年)は全米1位の大ヒットとなり、フルートを操るイアン・アンダーソンを中心にしたバンドは世界的な人気を獲得。今までにトータル5000万枚以上のセールスを記録している。2014年、イアン・アンダーソンが無期限活動停止を発表したが、2017年にバンドの活動を再開。今作がジェスロ・タル名義としては約18年ぶりの新作となる。聖書の一節を呼び起こしながら、近年の現代社会における様々な問題に警鐘を鳴らす内容となっている。アルバム・コンセプトからソングライティング、アートワークに至るまで、イアン・アンダーソンが心血を注いだ傑作。
■「The Zealot Gene(狂信者の遺伝子)」のミュージック・ビデオの視聴はこちら
■「Shoshana Sleeping(ショシャナの眠り)」のミュージック・ビデオの視聴はこちら
2017年には形になり始めていた『ザ・ゼロット・ジーン』は、ツアーやレコーディングを行うアーティストとしての生業が今までにない不安定要素に直面した時代に、あらゆる意味において因習の打破を目指している。 バンドリーダー、イアン・アンダーソンは、聖書のストーリーテリングにおける神話やテーマが新作の歌詞的内容に果たした役割について、以下のように語っている。
「私は聖典の華やかさやおとぎ話のようなストーリーテリングが純粋に好きなところがある一方で、その内容に疑問を呈したり、時には文脈からとんでもない類似点を引き出したりする必要性を感じることがあるんだ。このアルバムは全体を通じて良いこと、悪いこと、紛れもなく醜いことが浮かび上がりつつも、愛、尊敬、優しさといった要素が散りばめられている」。
最終的に彼らのツアー計画と『ザ・ゼロット・ジーン』の2020年リリースを頓挫させてしまった、新型コロナウイルスのパンデミックという世界を震撼させた混乱を振り返り、アンダーソンは以下のように語っている。
「あまりに突然だったよ。科学界や、見識あるごくわずかの政治家たちからの懸念や警告の真っただ中、私たちはみな信じられない思いで自宅に引きこもって、嵐が過ぎ去るのをじっと待っていたんだ」。
■イアン・アンダーソンがアルバムの制作過程について語る一連の語りおろしインタビュー(字幕なし)
ジェスロ・タル
『ザ・ゼロット・ジーン』
2022月1月28日 全世界同時発売
品番:SICP 31514 / :価格¥2,750 (税込)
高品質Blu-spec CD2(1枚)
歌詞・対訳付 / セルフライナー翻訳付 / 解説:山田順一
●『ザ・ゼロット・ジーン』収録曲
- Mrs Tibbets(ティベッツ夫人)
- Jacob’s Tales(ヤコブの物語)
- Mine Is The Mountain(山は私のもの)
- The Zealot Gene(狂信者の遺伝子)
- Shoshana Sleeping(ショシャナの眠り)
- Sad City Sisters(悲しい街の姉妹たち)
- Barren Beth, Wild Desert John(不妊のエリザベト、荒涼たる砂漠のヨハネ)
- The Betrayal of Joshua Kynde(ジョシュア・カインドの裏切り)
- Where Did Saturday Go?(土曜日はどこに消えた)
- Three Loves, Three(三つの愛、三つ)
- In Brief Visitation(束の間の訪問)
- The Fisherman Of Ephesus(エフェソスの漁師)
●ジェスロ・タル 現ラインナップ
- Ian Anderson イアン・アンダーソン
(フルート、アコースティック・ギター、ハーモニカ、ヴォーカル) - Joe Parrish-James ジョー・パリッシュ・ジェームズ
(ギター) - Florian Opahle フローリアン・オパーレ (ギター)[アルバムのみ参加]
- Scott Hammond スコット・ハモンド (ドラムス)
- John O’Hara ジョン・オハラ (ピアノ、キーボード、アコーディオン)
- David Goodier デイヴィッド・グーディア (ベース)
【輸入盤の商品フォーマット】
The Zealot Gene(2CD+Blu-ray Artbook)
【完全生産限定盤/EU輸入盤】
The Zealot Gene(1CD)
【EU輸入盤】
The Zealot Gene(3LP+2CD+Blu-ray Artbook)
【完全生産限定盤/EU輸入盤】
The Zealot Gene(2LP+CD)
【完全生産限定盤/EU輸入盤】
・Artbookを伴うEditionは両フォーマットとも、デモや当初のアイデア音源を収録した2枚目のCD、長文のライナーノーツ、ノー・マンのティム・ボウネスによるイアン・アンダーソンへのインタビューがフィーチャーされる。
・Limited Deluxe 3LP+2CD+Blu-ray Artbookは白色アナログ盤となっており、ラフなデモの収録された3枚目のLPが含まれる。また、ターンテーブル用のスリップマットと通し番号のついたアート・プリントも同梱される。
■イアン・アンダーソンが語る『ザ・ゼロット・ジーン』、盟友メンバー、収録曲
『ザ・ゼロット・ジーン』について
ついに、さほど心待ちにされていなかった新曲のコレクションがここに。このプロジェクトに取り組み始めたのが2017年だったなんて、信じられるかな! コンサート・ツアーに加えて、自伝本『The Ballad Of Jethro Tull』、リイシュー、ボックスセット、歌詞集『Silent Singing』の書き起こしと制作といった他のプロジェクトへの取り組みがあって、2018/19年のツアーからコロナイヤーの2020年にかけて、たった4曲しか仕上げられなかったからね。
僕の曲作りはほとんどの場合、写真か絵かにかかわらず、視覚的なイメージの参照を頼りにしている。『The Zealot Gene』では、きっかけは文章だった。1611年に書かれたその不朽の言葉は視覚的なイメージを即座に浮かび上がらせてくれて、おかげで僕らは絵を使って対象の素材を解釈し、歌にしていくというやり方に戻ることができた。
これらの曲は激しい感情をアイデアとして発展させている。そこには忠誠心、思いやり、寛容さ、愛の瞬間がある。しかし同時に、怒り、復讐、羨望、強欲さ、裏切りといった対照的な物語もある。
人というものは自分のアイデンティティを大きく定義づける内なる怒りを、人間の条件の一つとして持っていると思う。自分が取りつかれている事柄に関したことで怒りを覚える傾向が、ほぼ全員に植えつけられているのだ。人は誰もが皆、偽善的な言葉による洗脳や、心をむしばむ偏った政治的過激思想にあまりにもたやすく扉を開けてしまう。さらには偏見、外国人嫌悪、極右的な保守主義もそこに加わる。
まるで、知性のかけらもない落書きへと自分たちを駆り立てる遺伝成分を人は受け継いでいるかのようで、近年そのはけ口となっているのがSNSという名のスプレー缶塗料だ。でも考えてみれば、地元の酒場で一杯やりながらワイワイと陽気な言い合いをすることこそ、真の社会的交流というものではないのか。多用されすぎた流行りの「ウォークネス(訳注:人種差別や偏見、性差別、社会的不公平などに対する意識の高さを示す言葉)」とやらは、直接的な意見交換のプロセスをいとも容易に妨げてしまう。声を抑えたまま話し続ける方が身のためだ。だってバーで3杯目のダブルウォッカをチビチビやっているあの男、何やら異議を唱えたい様子で…。
イアン・アンダーソン
デイヴィッド・グーディア&ジョン・オハラ
スコット・ハモンド&フローリアン・オパーレ
フローリアン・オパーレ
ミュージシャンについて
イアン・アンダーソン(フルート、ヴォーカル、アコースティック・ギター、マンドリン、アイリッシュ・ホイッスル、パーカッション、ハーモニカ)
デイヴィッド・グーディア(ベース・ギター)
ジョン・オハラ(キーボード、ハモンド・オルガン、ピアノ、アコーディオン)
フローリアン・オパーレ(ギター)
スコット・ハモンド(ドラムス)
ジョー・パリッシュ・ジェームズ(ギター:トラックII)
バンドのミュージシャンたちはほとんどが結構長い付き合いだ。デヴィッドとジョンが正式にタルに加入したのは2006年だが、2004年には僕と一緒にいたし、「新入り」ドラマーのスコットもタルに加わってからもう10年をほんの少し超えている。フローリアンはオーケストラル・ツアーおよびソロ・ツアーで2004年から僕と一緒に仕事をした後、タルでもマーティン・バーの代役を何度か務めていて、2011年からはフルタイムのギタリストとして全てのショーに参加するようになった。
ローゼンハイムに建つ完成したばかりの自分のスタジオでの音楽作りに専念するため、2019年にフローリアンが抜けた後、僕らが見つけた若い新ギタリストのジョー・パリッシュ・ジェームズは、ライヴ・コンサートで新しい役割を再開するのに先駆けて、今回は1曲で顔を見せている。
各曲について
“Mrs Tibbets”はアルバムのために最初に書いた曲の一つだ。「見つめるな、振り返るな…」という部分の意味合いは自ずと明らかだろう。エクルズケーキについては、イギリスのランカシャー州エクルズの町発祥の甘く粘り気のあるカラント(訳注:落葉低木スグリの一種で、実をジャムなどに用いる)・ケーキのお菓子になじみのない人には、分かりにくいかもしれない。ジェームズ・バーチが1793年に初めて商品として作って世に送り出したと言われている。8月の朝にロスアラモスからやって来た訪問者がもたらす恐ろしい現実と、著しい対照を成している。
“Jacob’s Tales”。アルバムの中心となるフルバンド曲と同時期に書いたのだが、他の4つのアコースティック曲と一緒にようやく録音したのは2021年5月初めのことだった。他のミュージシャンたちと合流してスタジオでライヴ録音するまでに待つ時間が長くなるかどうかの見通しが、あまりにも不確かになっていることを僕は理解した。ワクチン接種の開始は、従来の近い距離で仕事ができるようにみんなを守ってくれるものではなかったのだ。この曲は家族間の強欲と嫉妬がテーマになっている。兄弟姉妹の間では決して珍しくないことだと僕は思う。
“Mine Is The Mountain”は恐らく、アルバム『アクアラング』収録の曲「マイ・ゴッド」の後年のパートナーと言える曲だ。例によって、歌詞の中核には強い視覚的なイメージの参照があった。惨めで苦しい行程の末にモーゼがシナイ山に登り、下にいる信奉者たちに水や食べ物を届ける前に怒れる創造主と対峙する姿は強烈なイメージで、僕よりずっと若い荒野のトレッカーでもない限り、想像に留めるのが一番だろう。
“The Zealot Gene”。アルバムタイトル曲には、大衆迎合主義の指導者たちによる過激で政治色の濃い世界への隠喩が多く含まれている。歌詞は社会的関係性の対立的な性質と、歴史上のどの時点よりも今日において憎悪と偏見の炎に油を注いでいる極端な意見を要約している。ここで僕が誰のことを指しているのか見当がつくと考える人もいるだろうけど、実際には、今現在、この条件に当てはまる国際的に有名な独裁的人物が少なくとも5人はいる。
“Shoshana Sleeping”はかなり大胆に―エロチックでさえある―称賛と性的興奮の瞬間を垣間見ることを意図しているが、優しさ、敬意、慎重な抑制によってそれが和らげられていることも願っている。穏やかで、敬意に満ちたのぞき見だ。カメラ付き携帯をオフにしておけば、何の害もない。絶対に共有すべき瞬間ではない―詩人かソングライターのペンによるものを除いて。
■「Sad City Sisters(悲しい街の姉妹たち)」のミュージック・ビデオの視聴はこちら
“Sad City Sisters”は数年前の土曜の夜、ウェールズのカーディフにあるセント・デイヴィッズ・ホールで行われたコンサートの帰り道の記憶をよみがえらせる。とはいえイギリスのどこの町だったとしてもおかしくないし、あるいは西欧諸国の大半の都市のどこかでもいい。一体なにゆえ、がむしゃらで傷つきやすい若者たちがあれほど容易に尊厳の損失という悲劇的な事態に陥り、風の吹きすさぶ濡れた通りで深夜に酔っ払ってだらしなく寝転がることになるのか? やや孤独好きな僕はショーの終了後に宿泊場所へと歩いて帰ることが多いのだが、深夜の酒盛りが攻撃性と狂気を帯びた光景となるのを毎度のように目にしている。人は僕のことを、パーティーをしらけさせる奴と呼ぶが。
“Barren Beth, Wild Desert John”に登場するのはエリザベトとその息子の洗礼者ヨハネ(訳注:英語読みでは「ジョン」)だ。うちの一家のスコットランド側の家系には、“ワイルド”ないとこのジョンがいた―その父と同様、彼も神父だった。大人になってから会ったことは一度しかないが、彼は背教的で物議を醸す牧師としての洗礼者ヨハネを僕に思い起こさせた。しかしいとこのジョンだったら、酔いの回りが早いヨルダンの酒ではなく、度数40%のウシュケ・バー(訳注:スコットランド語で「ウイスキー」)―すなわち命の水―を僕の額に振りかけていただろうという気がする。
“The Betrayal Of Joshua Kynde”は最初、冷戦時代のスパイと策略にまつわる寓話的な物語として始まった。最終的にはそれをかなり控えめにして、聖書に関するより逐語的な内容にした。とはいえそこに登場するのは、信頼していた者に結局裏切られることを予見していた架空の主人公、ジョシュア・カインド―我らが寛大で優しきナザレ人をほぼそのままの名前で用いたもの―なのだが。
“Where Did Saturday Go?”は失われた24時間について思案している。『パッション・プレイ』の幕間の、長めの休憩時間? 信心深い者にとってさえ、カーディフでの土曜の夜は単なる気晴らしにしかならないのだろう…。
“Three Loves, Three”。異なる愛の概念は、深いフィリア(訳注:アガペー[神の愛]、エロス[男女間の愛]、ストルゲー[親の愛]と並ぶ、古代ギリシャにおける4つの愛の概念の一つで、[友情または友愛]を示す)の愛、気高く精神的なアガペーの愛、そしてもちろん性的でロマンチックなエロスの愛といった具合に、微妙な差異を語ることが非常に重要だ。C・S・ルイス(訳注:『ナルニア国物語』の著者として有名なイギリス人作家[1898-1963])は、愛には4つの種類があるという見識を示したが、ストルゲーはどちらかと言えば単なる愛情もしくは感情移入だから、ここでは外させてもらった!
“In Brief Visitation”は我々全員の罪をかぶる「生け贄」について言及している。他人の行動に対する責めを負ったり非難を受け入れたりすることは、とても崇高な犠牲のように思える。
“The Fisherman Of Ephesus”。タルは1991年にエフェソスの大円形劇場で演奏を行った―それを許されたアーティストはこれまでにほんの一握りしかいない―数年後に僕は旅行者として再訪し、前回とは異なる歴史的な文脈で見ることができた。泥が固まってゆっくりと干上がっていく入江で暗喩的な釣り糸を巻き上げる、晩年を迎えた一人の老漁師を僕は想像してみる。兄弟たちは誰もが悲劇的な最期を遂げており、彼が唯一の生き残りだ。僕はこの歌を、他者の死を犠牲にして生き残った者の罪悪感の表現として捉えている。船の遭難、爆破事件、墜落事故などの生存者はしばしばこの種の精神的な苦しみを体験する。仲間を失って生きることは、愛の使徒である聖ヨハネにとってはとりわけつらいことだったに違いない。
▲『ザ・ゼロット・ジーン』(SICP 31514)ライナーノーツより抜粋。山田順一氏の解説を含むフルヴァージョンは実際の商品でお楽しみください。
JETHRO TULL ジェスロ・タル
ジャズ、ブルース、トラディショナル・フォーク、クラシックなどさまざまな要素を内包した独自の音楽性とシアトリカルなパフォーマンスに加えて、『アクアラング』(1971年)『ジェラルドの汚れなき世界』(1972年)『パッション・プレイ』(1973年)といった革新的なコンセプト・アルバムを次々に世に送り出し、時代に応じて変遷を重ねながら、単なるプログレッシヴ・ロックの枠にとらわれない活動を続ける英国を代表するロック・バンド。1967年、イアン・アンダーソンが在籍していたジョン・エヴァンズ・バンドを母体に結成。バンド名は18世紀イギリスの農学者の名前からつけられた。1本足でフルートを吹きまくるアンダーソンを中心に、1968年のレコード・デビュー以来、メンバー・チェンジもありながら数々の名作を発表。発表したアルバムを30作以上、のべ5000万枚以上を売り上げている。半世紀を越えていまだにシーンに多大な影響を与え続けている。その間の1989年の第31回グラミー賞では、最優秀ハードロック/メタル・パフォーマンス賞を受賞する栄誉にも輝いた。2014年には、バンドの無期限停止が宣言され、以降はイアン・アンダーソン名義で活動していたが、2017年から再びジェスロ・タルの名を掲げてツアーを周り、2022年には、ついにその名跡を復活させた待望のニュー・アルバム『ザ・ゼロット・ジーン』をリリースする。
●ジェスロ・タル 日本公式サイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/JethroTull/