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『毎木7ライヴ・フィルム・フェス』9/21 TM NETWORK『CAMP FANKS '89 at YOKOHAMA ARENA』上映 DJ KOO(TRF)登壇トークショー(T・ジョイ PRINCE 品川)の模様をレポート!
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毎木7ライヴ・フィルム・フェスティヴァル2023

 ライヴに拘ったEPICレーベルからこれまで発表された80~90年代の珠玉のライヴ・フィルム7作品を全国19都市24カ所の映画館にて、9月21日(木)より毎週木曜よる7時から7週連続一夜限定上映するイベント『EPIC レコード創立45周年記念 毎木7ライヴ・フィルム・フェスティヴァル2023 -THE LIVE IS ALIVE!-』。その第一弾TM NETWORK『CAMP FANKS '89 at YOKOHAMA ARENA』T・ジョイ PRINCE 品川での上映にて行われたDJ KOO(TRF)登壇トークショーのレポートをお届けします。



『CAROL』における長大な物語の展開やメディアミックスも、欲望と身体性を直接つなげたようなダンス・サウンドも、80年代後半の時代の空気を小室が敏感に感じ取り、それをTMサウンドに昇華したことは間違いない。

 かつて、「花木」という言葉があった。「土日の休みを有意義に過ごすために金曜の夜はゆっくり休むことにして友達や仕事の同僚と飲みに行ったりするのは木曜の夜に」という考え方だという説もあるし、「当時はもう木曜の夜から週末気分だったんだ」という説もあるけれど、いずれにしても木曜の夜に弾けちゃえ!という話である。バブル時代の終焉とともに死語となったが、31年ぶりに地方の住宅地の地価が上昇したなんていうニュースも聞こえてくる昨今、バブル再来の気配を感じ取る人がいても不思議ではないが、9月21日、「毎木7ライヴ・フィルム・フェス」と題した音楽ライヴ・フィルム上映イベントがスタートした。その名の通り、毎週木曜日の夜7時から、EPICレーベルが制作した音楽ライブ映像の名作を映画館の大画面とハイクオリティ・サウンド・システムで楽しもうという企画である。

 その第1回として上映されたのは、現在ツアー中のTM NETWORKが1989年8月に横浜アリーナで行ったライブを全編収録した作品『CAMP FANKS '89 at YOKOHAMA ARENA』。上映時間が約2時間半におよぶこの作品は、1988年にTMが発表したアルバム『CAROL』をフィーチャーしたツアーのファイナル公演を収めたもので、木根尚登原作による「CAROL」の物語をロック・ミュージカル的に展開する前半と、屈強なダンス・チューンをノンストップで連発していく後半の、コントラストを際立たせながらもトータルなTMワールドとして成立させてしまっているそのステージは、音楽的にも、またライブ・パフォーマンスの面でも、TMの一つのピークと思わせるが、その濃密なエネルギーを余すところなく伝える映像は圧倒的だ。



 特に後半のエネルギーの高さは月並みでないが、上映前にトーク・ゲストとして登壇したTRFのDJ KOOの話によれば、1993年にリリースされたTRFの1stアルバム『trf~THIS IS THE TRUTH』について、小室は「構想10年の作品」と語っていたと言う。つまり、1993年までの10年間に小室が試行錯誤を続けてきた“日本のダンス・ミュージック”を形にしたのがTRFの音楽ということなのだが、その試行錯誤の時期はまさにTMの活動期間と重なる。それを踏まえて、この1989年のステージで展開されているダンス・ミュージックとそのパフォーマンスを見直してみると、小室サウンドの進化の道筋をより深く辿ることもできそうだ。「歴史の流れを眺められるのが老人の特権だ」と言ったのは、EPICレコードの創始者、丸山茂雄さんだが、老人でなくても歴史の流れを俯瞰するきっかけを与えてくれるのも、こうしたアーカイブ映像の重要な価値の一つだ。

 それはともかく、アルバム『CAROL』における長大な物語の展開やメディアミックスも、欲望と身体性を直接つなげたようなダンス・サウンドも、80年代後半の時代の空気を小室が敏感に感じ取り、それをTMサウンドに昇華したことは間違いない。そして、この映像で確認できる興奮の底流にあるのは、1988年から89年にかけての時期、この国の誰もがなんとなく感じていたものだろう。ちなみに、「花木」という言葉が、新語・流行語大賞新語部門の銀賞を受賞したのは1988年のことである。

文:兼田達矢 撮影:山本佳代子




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