ジャズメガネのセンチなジャズの旅
131. 「中本マリ/鈴木勲・渡辺香津美 / マリ・ナカモト III」
「歌姫」という響き、あまり好きではない。なんだか実力より容姿をもっての褒め言葉のような気がするからだ。特に日本のジャズ・ボーカル・シーンの場合、実力がないのに褒めなければいけない時に「歌姫」と形容しがちだ。アメリカのジャズ・シンガーが英語がネイティブであることで、日本人ジャズ・シンガーはすでにハンディーがある。その点、中本マリさんの「歌姫」具合は本物だ。ハスキーなヴォイスで情感溢れる歌唱、スウィングするスキャットは聞く人の心を一気に掴む。ポップな唄を歌う時にはナンシー・ウィルソンのような味わいもある。1970年代から活躍、今でも日本中で活躍中。日本を代表する本物の「歌姫」の一人だ。
text & cut by Kozo Watanabe