ジャズメガネのセンチなジャズの旅
122. 「ボッサ・アンティグア/ポール・デスモンド」
風のようにサックスを吹きたい。それは長年、自分の夢だった。憧れの人はポール・デスモンド。もちろん、正反対の奏法のエリック・ドルフィーのようにエキサイティングなサックスにも憧れたが、年齢を重ねた今では、ポール・デスモンドのような甘い風のような音を奏でたい、という気持ちが強くなってきている。デスモンドのプレイの特徴はデイヴ・ブルーベックのカルテットに代表されるが、この『ボッサ・アンティグア』のようにボサノバ集になると余計に風の印象が増してくる。軽やか。しかし、決して手を抜いた音色ではない。丸みを帯びた甘い音色。それは管への息の吹き込み方がアクセルを全開しながら、ブレーキをかけるというような奏法だからだ。風になるにはパワーがいるのだ。最近、マウスピースをデスモンドが生前愛用していたグレゴリーにかえた。なかなか手強いマウスピースだ。風の様なサックス奏者に向かってまだまだ精進しなければ。。
text & cut by Kozo Watanabe