ジャズメガネのセンチなジャズの旅

116. バルネ・ウィラン『バルネ』
116. バルネ・ウィラン『バルネ』

   「バルネ」というアルバム、数あるジャズの名盤の中でもレアな方に入るものだが、聞いたのは高校一年生の頃と早い。静岡に「パークサイド」というジャズ喫茶があって、通い始めた頃にマスターが好きでよくかけていたのだ。暗い店で、このアルバムと「リターン・トゥ・フォーエバー」がよくかかっていて、煙草の煙とコーヒーの匂い、掃除をしていないクーラーの匂いが入り混じるジャズ喫茶だった。ユリイカも置いてあった。「ジョードゥ」というデューク・ジョーダンの曲が大好きでクリフォード・ブラウンもやっているが、こちらの方が聞いたのは早かった。加えて、「レディ・バード」のジョーダンのピアノ・ソロが躍動的で興奮したものだった。パリという異国の地と20代のバルネに刺激されたのだろう。いぶし銀と言われたジョーダンの珍しくエキサイティングな演奏が残された。

text & cut by Kozo Watanabe