落語 みちの駅

第百二十五回 「第220回 朝日名人会 レポート」
 6月18日14時から第220回朝日名人会を開催。柳家さん光「浮世床」・古今亭志ん丸「位牌屋」・五街道雲助「つづら」・柳亭市馬「三十石」。

 唯一の“締めた”ネタ「つづら」はあまり長丁場ではないので、14時開演・16時45分終演。この会としてはスリムに経過しました。

 真打昇進遠からずのさん光さんはオーソドックスに「浮世床」の「夢覚め」まで。近頃とかく冒険指向が強い若手はオーソドックスを避けたがりますが、権太楼一門の姿勢には筋が通っています。さらにますます精進を。

「位牌屋」は近年はあまり聴きません。ケチンボウ噺とオウム返し噺の二重構成で、しかもオウム返しの主役は小僧というのが珍しい。見かけボーイッシュな志ん丸さんが己れを知る演目選定をした、ということですね。

 雲助さんは師・十代目金原亭馬生ゆずりの「つづら」。この演者ならではの闇と色気の世界でじっくり聴かせてくれました。なかなか凄みがありますが噺に無理や不自然が少しもなく、雲助さんならではの江戸人情噺の逸品です。

 中入り後は一転して市馬さんの落語アリアの名唱で綴る「三十石」。近年は工夫を加えて舟唄が大きく拡大し、その分、往年の三遊亭圓生バージョンにはあった「謎かけ」「ろくろ首」「くらわんか舟」などが外されました。「三十石」は東京落語の柳亭市馬。そういう時代が来たのです。

第百二十五回 「第220回 朝日名人会 レポート」
柳家さん光「浮世床」


第百二十五回 「第220回 朝日名人会 レポート」
古今亭志ん丸「位牌屋」


第百二十五回 「第220回 朝日名人会 レポート」
五街道雲助「つづら」



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著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。