ジャズメガネのセンチなジャズの旅

95. 森剣治クインテット『ビバップ’82』
95. 森剣治クインテット『ビバップ’82』

   パーカーはアルト・サックス奏者にとっては神だ。メロディー、リズム、ハーモニー、そして音色。どれをとっても一度は身につけるようにトライをしなければならない。私自身も何度も練習しているが、極める事は不可能だ。
   ジャズ史には、ほぼ同じフレーズを吹いたりするパーカー直系のアルト奏者はたくさんいる。そしてまた、パーカーを手本としながら、独自の世界に発展していくアーティストも多い。パーカーを基本にエキセントリックな跳躍するフレーズを吹くエリック・ドルフィー。フリージャズなのに、パーカー・フレーズが隠れているジミー・ライオンズ。今、活躍中の纐纈雅代さんもフリー系だがパーカーはマスターしている。
   森剣治さんはフリージャズ寄りの方かな、と思っている方も多いかと思うが、このアルバムではほぼパーカー直系のプレイを聴かせてくれる。パーカーのフレーズは神の指紋と言われる。パーカーへのトリビュート・アルバムを残す森さんの実力には驚くばかりだ。

text & cut by Kozo Watanabe