盤面に刻まれた溝に針を落とす瞬間のドキドキは、きっと大昔から変わらず、それに触れたみんなが感じた共有体験なのだろうと思うとロマンが止まらない。

 “幻の名盤から架空の1枚まで。” なんて夢のある素敵なテーマなんだ！というワクワクな気持ちと同時に、これは語りたいことがありすぎてまとめるのが困難だ！というソワソワな気持ちも生まれ、いったん気持ちを落ち着かせるために、ドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』をプレーヤーにかけた。

　仕事でもプライベートでも最近特に大切にしていることの一つに、基本に立ち返る時間を作ること、がある。そう、何事も基本やルーツって、本当に大切。そんなことをしみじみ思いながら、今まで何度となくコンサート会場のサウンドチェックで聴いてきた音をBGMに、大好きなレコード、アーティストの数々を頭に巡らせていく。私にとってレコードに触れることは、時間を旅すること。盤面に刻まれた溝に針を落とす瞬間のドキドキは、きっと大昔から変わらず、それに触れたみんなが感じた共有体験なのだろうと思うとロマンが止まらない。

　ああ、ヤバい。さっそく妄想と空想でテーマから脱線するところだった。基本にかえろう、と思ったところで、ふとあることに気がついた。今までも何度か好きな音楽を紹介したり、感想を記事にしてもらったりという機会はあったものの、こういった企画で自分自身の関わるものについて書いたことがほとんどなかった。

　私は日々、声優をやりながら大好きな歌も歌わせてもらっている。この仕事を始めてから15年。アナログ好きが功を奏して、自身のベストアルバム『love your Best』の発売の際には、なんとソニーミュージック乃木坂スタジオでのカッティング第1弾としてLPもリリースさせてもらえるという幸運にも恵まれた。尊敬するアーティストたちがやってきたように、自分の声がレコードに刻まれるというのはとてつもなく感慨深いものだった。そうだ、その感動をもう一度味わいたい。できれば次は、大好きな仲間と一緒に。

『love your Best』
MusicRay'n SMJL-101
【Sony Music公式ページ】

　私には、先述した以外にもう一つ顔がある。ユニット『スフィア』としての顔だ。事務所の同期のメンバーと結成しての活動は、今年で12年になる。間、それぞれの結婚や出産やイギリス留学や、とにかくいろいろなことがあったけど、今も仲良く楽しく活動を続けさせてもらっている。そんなスフィアとして、最近うっすら意識しているのが結成15周年という数字。まだまだ時間はあるけれど、何か今までやったことのないチャレンジを混ぜながら、大きなものをお客さまにプレゼントしたい。それすなわち！レコードしかないじゃないか!!　今回の記事のおかげで気づいてしまった。来たるスフィア結成15周年、私はレコードをリリースしたい…!!!　となると、まずは絶対収録したい曲が、昨年デジタルリリースした「スクランブルデイズ」。コロナ禍での楽曲制作はリモートでの打ち合わせから始まり、メンバーのひとりが留学中なのを良いことに、最終的にはそれぞれがレコーディングした音源をイギリスのスタジオに集めて仕上げてもらうというワールドワイドな楽曲になった。サウンド的にもLPに落とし込んだ時にどんな温かみが広がるのか気になるところだ。

　もうひとつ、アナログ盤にして聴いてみたいスフィアの曲がある。2017年リリースの「Endless Anniversary」だ。私たち自身の10年後の未来に向けて歌った楽曲で、一時ユニットとして音楽活動の充電期間を迎える直前に発表した思い入れの強い曲だ。この曲をレコードにするなら、最後の合唱パートにはお客さまの声も一緒に収録できたら最高。ライブ盤のようにみんなの声が重なってフェードアウトする終わり方は、とても私たちらしいと思う。この2曲はマストで、あとはできれば新曲も入れられたらいいな。いつもはデジタルな音色が多い印象のスフィアの楽曲だけど、アナログ盤ということを最初から意識して、思いっきりアコースティックなバラードなんかも4人で歌ってみたい。レコードならではの楽しさと魅力をたくさん詰め込んだ1枚にしたいと思うと、夢は膨らむばかりだ。

スフィア『10s』
Lantis LASA-5163
※「Endless Anniversary」収録
【Sony Music Shop】

　結果、私の妄想とひとりごとがダダ漏れしたような文章になってしまったけれど、ここまで読んで下さったあなたにとっても、レコードについて思いを馳せるきっかけになれますように。レコードは、音と一緒に夢も時間もロマンも詰め込める魔法の機械。小さな溝に刻まれた大きな歴史を感じながら、良きレコードライフをお送りください！