落語 みちの駅

第百十八回 「第213回朝日名人会レポート」
 10月16日(土)M2:00から有楽町マリオン朝日ホールで第213回朝日名人会。三遊亭わん丈「壺算」、橘家圓太郎「おかめ団子」、入船亭扇遊「井戸の茶碗」。休憩25分のあと桂文珍「たちきれ」。少しずつ押して終演は17時05分。マイナス1で4人公演ながら終演時刻は5人公演の頃と大差なく、どうやらこれがこの会のスタンダードになりつつあるようです。

 わん丈「壺算」。2、30年前には演者が競ってこの噺をやったものですが、近年は少し下火。わん丈さんは三遊亭兼好師に習ったそうで、サゲも少し変わっています。古いサゲよりはいいと思いました。

 圓太郎「おかめ団子」は飯倉片町あたりの仕込みが丁寧でした。説教くさくなることもなく江戸のメルヘン・ストーリーを楽しめました。

 扇遊「井戸の茶碗」はバランスのとれた、ほとんど非の打ちどころなしの名演。型にはまるようではまらず、清々しい人物戯画。大器じっくり上昇中とうれしく思いました。

 文珍「たちきれ」。じつは十数年前まで私は文珍師匠に「たちきれ」はやらなくてもよろしいのでは? と余分な差出口をしていた人間です。

 もっと文珍的爆笑噺を数多く演じてほしいと思っていたからなのです。

 数年前から気持が変わって文珍流「たちきれ」を聴いてみたくなってお願いしたのでした。罰が当たったのか、コロナの妨害を受けてなかなか実現せず、この日に至りました。

 近頃はゆったり噛みしめながら語る芸風に転じつつある文珍師匠。十数年前には想像もできなかった独自の「たちきれ」が生まれました。

第百十八回 「第213回朝日名人会レポート」
三遊亭わん丈「壺算」


第百十八回 「第213回朝日名人会レポート」
橘家圓太郎「おかめ団子」


第百十八回 「第213回朝日名人会レポート」
入船亭扇遊「井戸の茶碗」


★この日の「井戸の茶碗/入船亭扇遊」の高座映像を、オンラインクラブ「らくご来福」会員限定コンテンツ『「朝日名人会」この一席』として、11/5に公開する予定です。ぜひご利用ください。


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著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。