落語 みちの駅

第百十六回 「第211回 朝日名人会」
 7月17日(土曜日)PM14時より開演。観客は六割入りの自粛体制をまだ継続中ですが客席の反応もよく、活気と熱気が戻ってきました。6割か10割かの、数の問題ではないのですね。出演者が若手中心なので、その傾向が強まったように思います。

 林家たま平は「稽古屋」。二ツ目がサラクチで音曲噺をやるのはいかが?という声が上がりそうですが、音曲噺のようなフレームがはっきりしている噺のほうが素噺よりもじつはたやすい面があるのです。本人の意欲を買いました。おもしろく仕上がったと思います。正蔵師匠の発声、呼吸が随所に聴ける高座でもありました。

 三笑亭夢丸「蜘蛛駕籠」。熱演でした。軽くナンセンスに笑わせる「蜘蛛駕籠」がほとんどという状況を破る、熱演型アクション落語。もう少し全体がコンパクトになれば、もっと大ウケしたことでしょう。

 春風亭一之輔「不動坊」。冴えない独身三人男プラス万年前座の四人の描写が秀逸で、この噺のベスト5に入る出来栄えだと思います。

 柳家喬太郎「宮戸川(全)」。演者の多い「上」はサラリとすませ、しかし「下」もそれほど気張らずバランスのとれた秀演。「通し」だからと気張ることもない、若き大家の名高座でした。

第百十六回 「第211回 朝日名人会」
林家たま平「稽古屋」


第百十六回 「第211回 朝日名人会」
三笑亭夢丸「蜘蛛駕籠」


第百十六回 「第211回 朝日名人会」
春風亭一之輔「不動坊」

著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。