ジャズメガネのセンチなジャズの旅

84. 今田勝『ワン・フォー・デューク』
84. 今田勝『ワン・フォー・デューク』

   エリントンが亡くなったのは1974年。僕が高校3年生の時だ。エリントンの名曲が1930年代、40年代に書かれたことを思うとジャズ史の中でも創始者の一人なのだから、彼が長生きだったのか、僕が古い人なのかは分からないけれど、いまだにその死の報道は良く覚えている。同級生にもエリントンというニックネームの奴がいたくらい当時はポピュラーな人だったのだ。
   「A列車で行こう」を除くエリントンの多くの名曲に心揺さぶれるようになったのは大人になってからだ。特にバラードの数々の美しさは大人でなければ分からない機微がある。コード進行も難しいし、演奏もままならない。でも、とろける様なメロディーには泡沫の恋や夢のイメージがある。だから、多くのジャズ・ミュージシャンはいまだに演奏し続けているのだ。

text & cut by Kozo Watanabe