ジャズメガネのセンチなジャズの旅

83. 市川秀男『明日への旅立ち』
83. 市川秀男『明日への旅立ち』

   TBMが設立される前、和ジャズ専門のタクトというレーベルがあった。渡辺貞夫さんのブラジル録音や日野皓正さんのデビュー・アルバム、大ヒットアルバムを制作。タクトという電気メーカーが作ったレーベルだったが、日本のジャズ史では重要なレーベルだった。そこで輝いていたのが、ジョージ大塚トリオ。あの黄金のクインテットの前のユニットだ。ピアノが市川秀男さん。トリオは当時、自由自在に先鋭的な演奏を展開していた。ドラムはトニー・ウィリアムスのようで、ピアノはハンコックのようだった。1965年から69年のことだ。
   市川さんは高度なハーモニーを早くから取り入れ、日野さんの斬新なグループにも参加。来日したフィル・ウッズとの共演も残している。「明日への旅立ち」を含め、いつの時代も一歩進んだピアニストだ。

text & cut by Kozo Watanabe