ジャズメガネのセンチなジャズの旅
81. 三木敏悟とインナー・ギャラクシー・オーケストラ『海の誘い』
ビッグバンド・ジャズといえばエリントンやベイシーを思うのが常識だろうが、コンボばかり聞いていた自分には、マイルスとの繋がりが深かったギル・エヴァンスの名前がすぐに思い浮かぶ。ギルのアレンジは魔術のような音の積みによって実際には出ていない高音が聞こえてきたりする。そんなマジックがスイングするビッグバンドよりとても興味深かったのだ。
三木敏悟も魔術師的な作編曲家。名作「北欧組曲」の不思議なサウンドは今でもジャズ・マニアから愛されている。シュールなアート・ワークも音同様ミステリアスだった。そんなアルバムが発売されてから6年後、今度はより大人数の編成で一大組曲「海の誘い」を発表した。ファゴットからピッコロまでの幅広い音域で想定を超えた音の積みを実現させている。ギルのような奇才だ。そして描く風景は「野郎人魚の宴」。なんとも痛快ではないか。
text & cut by Kozo Watanabe