私が欲しいレコード
幻の名盤から架空の一枚まで。今聴きたい、今欲しいレコードを、各界のレコード愛好家のみなさまに、自由な発想で綴っていただきます。
第11回【リサ】 元アイドル
CDの時代に育ち、自らもCDを沢山リリースしてきた私にとってレコードは「憧れ」のものでもあり、少しずつ自分のそばに増やしていく「宝物」でもある。
レコードのことを思う時に、まず私の頭の中に浮かぶのは、母が若かりし頃に集めたレコードを私が二十歳になった時に譲り受けたことだ。ビートルズ、ローリング・ストーンズ、エルヴィス・プレスリー、シャルル・アズナヴールなど様々なレコードであった。
当時の自分にとってレコードは完全に新しいものとして飛び込んできた。存在は知っていたもののレコードを買うという習慣もなく、聴くための機器も持っていなかった。それをきっかけに、自分でも買ったCDの中からより好きだったものを改めてレコードで購入をし、少しずつ集めていった。
また、2016年にタワーレコード渋谷店内に再オープンしたパイドパイパーハウスの店主である長門芳郎さんの存在も大きかった。パイドパイパーハウスは、1975〜1989年に南青山の骨董通りにあった、沢山のミュージシャンや音楽通たちに愛されたレコードショップだ。私が音楽活動をしていた当時、レギュラーで担当していた音楽番組をきっかけに長門さんに出会い、その後も自分のライブや収録の合間に長門さんを訪ねては、沢山の音楽を教わったのだ。いつも温かく迎えていただき、自分にとって新しい音楽に出会えるのが心から嬉しかった。長門さんにお勧めしてもらったものを買ってはまた次の週に、それが好きだったらこっちもいいよと、私の世界を一気に広げてくれた。そしてどんどんといわゆる沼にはまっていったのだ。CDの時代に育ち、自らもCDを沢山リリースしてきた私にとってレコードは「憧れ」のものでもあり、少しずつ自分のそばに増やしていく「宝物」でもある。
「私が欲しいレコード」は、それはもう数え切れないほどあるのだが…かまやつひろしさん『あゝ、我が良き友よ』、有頂天『でっかち』、山下久美子さん『Baby alone』、真島昌利さん『夏のぬけがら』は大学時代からずっと聴いてきたアルバムで、今でも喉から手が出るほどレコードでも欲しいと思う作品である。どれも言わずと知れた名作であるが、大好きなアルバムはレコードで手元に置いておきたくなってしまう。CDでもレコードでも、音の細部まで聴き尽くしたいのである。自分自身がリアルタイムでなかったからこそ、より憧れを持ち、追いつきたくなるのだ。
ここ最近でリリースされた作品の中でも、レコード化を願うものがある。THE TOKYOの1stフルアルバム『J.U.M.P.』である。日本のロック、フォーク、歌謡曲を感じさせながらも、それを現在に昇華させている彼らの音楽は、レコードでも楽しみたいものだ。歌詞やメロディ、そして彼ら自身からもふと感じる懐かしさや切なさは、きっとレコードだとよりその良さが際立つのではないだろうか。
阿部芙蓉美『沈黙の恋人』は2012年の作品であるが、今もずっと心の中に残っている、頻繁に聴いている作品だ。その唯一無二の美しい歌声と奥深く純度の高いメロディは、レコードでも体験したいと思う。心がふっと落ち着き、まっさらな優しい気持ちになれる一枚である。
これからも自分の好きな音楽たちのパズルのピースを埋めるかのように、レコードを集める旅は続く。