ジャズメガネのセンチなジャズの旅
75. 水野修孝 +宮間利之とニューハード&オールスター・ゲスト『ジャズ・オーケストラ ’73』
水野修孝さん。鬼才だ。その類い稀な作曲能力は言葉では言い表せない。音を聞いて感じるしか全ての要素と対峙出来ない。長いメドレーの曲は交響曲のような形式ではあるがその内容は前衛ジャズ。水野のペンによるアンサンブルを縫って、ソロイストは魂を解放していく。海外ではジャズ・コンポーザーズ・オーケストラというプロジェクトが同じような前衛ジャズを構築していたが、日本にも存在していたのだ。
間違いなく簡単に売れる音楽ではない。今のメジャー・レーベルなら企画の提案をしたところで、すぐに没だろう。このアルバムを制作したプロデューサーの藤井さんは売れるとか、売れないとか、きっと考えていなかったのだろう。良いものは残す。そんな意気込みが感じられるから、演奏者たちも嬉々として取り組んでいる空気が伝わってくる。
豊かな時代になったから、芸術も豊かになったか、というと決してそうではないのだ。。
text & cut by Kozo Watanabe