ジャズメガネのセンチなジャズの旅
74. 弘田三枝子『ステップ・アクロス』
ミコちゃんといえば、14歳でデビュー、洋楽の日本語カバー・ポップスで大ヒットを飛ばした少女だった。体から溢れんばかりのパワーで歌った「ヴァケーション」は当時の高度成長時代の勢いに乗って日本中を明るくしてくれた。僕自身は伊豆下田に住んでいて小学校低学年。海辺に次々と建てられるホテルの建築現場のラジオから流れるカヴァー・ポップスの洗礼を浴びた。そんな時代から時を少し経た1965年、弘田さんが18歳の時、ニューヨークでビリー・テイラー・トリオとジャズのアルバムを出していたのを知ったのは随分後のことだ。その後、1969年の「人形の家」の大ヒットで彼女の歴史は塗り替えられてしまう。
このアルバムは1978年制作。彼女が30歳の時のキャリアが詰まった作品だ。ジャズ・スター達を従えて一歩も引けを取らない。流石にスターだ。ちょっとナンシー・ウィルソンのような立ち位置でもある。そんな大歌手、弘田三枝子さんが7月に亡くなられた。昭和の灯が消えていく。合掌。。
text & cut by Kozo Watanabe