ジャズメガネのセンチなジャズの旅
70. アントニオ・カルロス・ジョビン『アントニオ・ブラジレイロ』
サウダージ。なんとも表現しがたい愛おしい感覚。ジョビンは僕の中でいつも愛おしい記憶と共にある。20代最初の頃、免許をとって初めてドライブした時にもカー・ステレオでA&Mの「ウェイブ」を聴きながら、キラキラ輝く海を横目で見ていた。その光景は今でも覚えている。
そして、1986年8月の日比谷の野音。まだ暑い夕方、ジョビンの初来日を見た。彼はピアノでイントロを弾こうとしたけれど、少し待って蝉が鳴き止む瞬間を待ってイントロを弾いた。至福の一瞬。あの幸せ感もサウダージと言うのだろうか。
気持ちがいい場面にはいつもジョビンの音楽がある。これからもずっとそうだろう。オブリガード、トム・ジョビン。。
text & cut by Kozo Watanabe