私が欲しいレコード
幻の名盤から架空の一枚まで。今聴きたい、今欲しいレコードを、各界のレコード愛好家のみなさまに、自由な発想で綴っていただきます。
第8回【本秀康】 イラストレーター/漫画家
レコード店に行けないのは辛かったけど、どのレコード店よりも自分好みのレコードが揃っているのがうちなんだと再認識して、以前より自分のレコード・コレクションへの愛が深まりました。
コロナの影響でレコード店に2ヶ月以上行けませんでした。毎日のように買っていたレコードが買えなくなったことで今が歴史的にヤバイ状況だとようやく実感した自分…どうかしてると思いますが、世のレコード好きは皆さんそんなものかもしれませんね。
そんなこんなで自粛期間中は家にあるレコードを聴いていました。当たり前ですが、うちのレコード棚は自分が好きなレコードだらけ。棚のどこから抜いてもことごとく好きなレコードなのです。レコード店に行けないのは辛かったけど、どのレコード店よりも自分好みのレコードが揃っているのがうちなんだと再認識して、以前より自分のレコード・コレクションへの愛が深まりました。
さて、前置きが長くなりましたが「私が欲しいレコード」は、the brilliant greenの1stアルバム、『the brilliant green』です。このアルバムがリリースされた90年代後半にも、僕は長い間レコードが買えない時期がありました。仕事のオーバーワークで体調を崩してしまい、都内の仕事場を畳んで半年ほど実家で静養生活を送っていたのです。田舎に引っ込んでもレコードを買う習慣はやめられずCD店に通いましたが、当時はアナログ全滅期だったので地方のCD店にはアナログ盤は1枚もなく、「本当はアナログ盤で欲しいけど…」と思いながら、毎日のようにCDを買っていました。しかし品揃えの乏しい田舎の小さなCD店ですから欲しいCDはすぐなくなってしまいました。CDは買い尽くしたけど手ぶらで帰るのは寂しい。その場合どうするかというと、すでに持ってるCDをまた買うのです。バカみたいですがこれがコレクターの習性、心理というものでしょう。
the brilliant green
『the brilliant green』(1998)
あのときもっとも多くの枚数を買ったCDが、ブリグリの1stアルバム『the brilliant green』でした。実家での静養生活の唯一の娯楽が、僕のために親が契約してくれたスペースシャワーの音楽番組を観ることで、頻繁にオンエアされていたブリグリの「冷たい花」のMVをきっかけに、僕はブリグリにどハマりしていたのでした。初回盤のデジパック仕様を買い集めてるうちプラケースの通常盤が出て狂喜し、2種類の『the brilliant green』が手に入ったことで欲が出てさらにバージョン違いが欲しくなりました。しかし存在しないものは買えない。そこで思いついたのがレンタル店の放出CDです。店舗によってジャケットに貼ってあるレンタルシールのデザインが違う。これはジャケ違いと言っても過言ではないだろう。そう決めた僕は自転車で県下のレンタル店を何軒も回り、レジ横のレンタル放出ワゴンから『the brilliant green』を血眼で漁りまくりました。
あの当時、20代の僕が自転車でレンタルCD店を巡りながら思っていたこと、それは「ブリグリの1stアルバムのLPがあったらな」です。その後出た2ndアルバムと3rdアルバムはリリース当時にすぐアナログ盤になっています。しかし超名盤の1stアルバムは未だアナログ化されていないのです。あの頃夢想した銀色に輝く『the brilliant green』のLPジャケットを手にすることができたら、これ以上の幸せはありません。
- ●本秀康(もと ひでやす)
- 1969年京都生まれ。イラストレーター/漫画家/7inchレコードレーベル「雷音レコード」主宰。著書に『MUSIC BOOK 本秀康音楽イラストレーション集』(Pヴァイン)、『レコスケくん』(ミュージック・マガジン)、『あげものブルース』(亜紀書房)、『ワイルドマウンテン』(小学館)、『たのしい人生 完全版』(青林工藝舎)などがある。
Twitter: @motomotohide
Instagram: @hideyasu_moto
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p-vine.jp/news/20200629-170000