「東京の音」というテーマでもレコードを創ってみたいですね。
東京の姿を新しいアプローチで想像するきっかけにもなる気がします。

　レコードというと、思い出すのは、最初に買ったレコードですね。

　中学生の時でしたが、放送実行委員会というものに所属していて、登下校の時に流す音楽を選ぶ役回りをしていたんですが、その頃、初めて自分のために買ったのがビリー・ジョエルのLP「52nd Street」でした。当時、静岡に住んでいたんですが、洋楽に出会う機会が少なくて、レコード屋さんで出会う音楽が、自分の洋楽のルーツの１つになっていると思います。ABBAやAir Supply、他にもYMOや当時、好きだった山口百恵さんのレコードを持っていました。あとは、ピアノを習っていたこともあり「クラシック」のレコードもよく聞きました。グレン・グールド、マルタ・アルゲリッチ、ウラディミール・ホロヴィッツ、アルトゥール・ルービンシュタインといった名ピアニストたちのレコードをよく聞いていましたね。レコードのジャケットを開ける時の独特な空気感が好きで、プロダクトとしての美しさ、封を切った時の香りにワクワクしていたことを思い出します。

　最近、僕がナビゲーターを務めているJ-WAVE TOKYO MORNING RADIO（81.3FM 毎週月曜～木曜　朝6時～9時OA）でも、毎朝、レコードから音楽を届けることを始め、10月から「MORNING VINYL」というコーナーも立ちあげたんですが、やっぱり、針を溝に落として、そこから聞こえてくる音楽からは、いい意味の凹凸感が感じられるのがいいですね。同じ音楽かもしれないけれど、どこか「特別感」があります。レコードに改めて触れるようになって驚いたのは、旧譜の復刻版はもちろん、新しいミュージシャンたちも、あえてレコードで音楽を発表していること。こうした事実からも、レコードの魅力を感じますし、ただ、懐古するだけではなくて、今、21世紀の新しいレコード文化が創られ始めているんだなぁ、とも感じています。そんな新しいレコード文化の時代に、もし、自分が企画して音楽を届けることができるなら、「ミュージカルの名曲を集めたレコード」が欲しいですね。

　ミュージカルの面白いところは、いい意味で、クラシカルなものからロック調の作品まで、クロスオーバーしているっていうところで、そんなそれぞれの音楽を集めた2枚組のレコードを作ってみたいです。「Tommy」や「Hair」の「Aquarius」、「Jesus Christ Superstar」、「RENT」、「Evita」の「Don't Cry for Me Argentina」といった作品の音楽を集めたものと、「Les Misérables」や「West Side Story」、「Sound Of Music」みたいなフルオーケストレーションが楽しめる1枚！僕にとっての「夢の2枚組レコード」がまとめられたら最高です。あとは、音楽だけじゃなくて「人の声」がレコードになっていったら素敵だなぁと思います。本の読み聞かせやラジオドラマ、もくしは、僕が担当しているJ-WAVE TOKYO MORNING RADIOが、レコードになっても面白いですよね。もう１つ「東京の音」というテーマでもレコードを創ってみたいですね。毎朝、早起きしていますが、六本木でも耳を澄ますとスズメが鳴いていたりして、こうした「東京の朝の音」がレコードで届けられたら、東京の姿を新しいアプローチで想像するきっかけにもなる気がします。

　欲を言えば、キリがないですが、こうした「夢のレコード」が本当に実現できたら、1977年にボイジャー探査機に載せられて宇宙に打ち上げられた「ゴールデンレコード」のように、宇宙にも届けたいですね。