ジャズメガネのセンチなジャズの旅

42. ゲイリー・ピーコック・トリオ『イーストワード』
42. ゲイリー・ピーコック・トリオ『イーストワード』

   プーさん。中学生の頃、プーさんの「ダンシング・ミスト」が大好きだった。あのうなり声が混じった独特のエレピの響き。その頃、ちょうど東洋的なアコースティック・ピアノ・トリオのアルバムも出た。ゲイリー・ピーコックのソロ名義だったが、プーさんがピアノだった。ジャケットの美しい写真に魅せられて買った。硬質で哲学的なサウンドだったが、「ダンシング・ミスト」と対をなしていた「イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー」というバラードを良く聴いていたので違和感はなかった。

    2007年に日野さんのアルバムのために2枚、プーさんと録音をした。メールでたくさんのやりとりをして、N.Y.でもたくさんお話をした。その時、日野さんとのDUOで「イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー」をやって欲しいとお願いしたが、「覚えていない」と言われてしまった。亡くなられた今、もうその願いは二度とかなわない。


text & cut by Kozo Watanabe