ジャズメガネのセンチなジャズの旅

34.笠井紀美子『GOLDEN☆BEST 笠井紀美子~Singles 1976-1984~』
34.笠井紀美子『GOLDEN☆BEST 笠井紀美子~Singles 1976-1984~』

  1970年代の日本人のジャズの流れは二つに分かれていた。一つはTBMに代表される骨太のサムライ・ジャズ。そしてもう一つはCBS/SONYに代表される洗練された洋楽的なジャズ。インディーズとメジャーの資金力の違いもあるのだが、プロデューサーに流れる血の違いが明らかに異なっているのが当時の少年の僕でも感じていた。笠井紀美子さんはこの両レーベルに録音を残していて、TBMのものは重く、ダークでスモーキーだった。それはそれで大好きだったのだが、CBS/SONYに移ってからの彼女はすごい勢いで洗練されていく。共演にはアメリカの一流アーティストが起用され、ついにはハンコックとの共演で世界的な名盤を作ってしまう。ジャケットも洗練されたものばかり。この時期に確立された彼女の作品は和ジャズではなく、洋楽だったところが印象深い。


text & cut by Kozo Watanabe