落語 みちの駅
第八十一回 年納めの朝日名人会
12月16日PM2時から第175回朝日名人会。桂宮治「壺算」・三遊亭歌武蔵「禁酒番屋」・春風亭一朝「七段目」・柳家喬太郎「同棲したい」・柳亭市馬「文七元結」。
「文七元結」は45分強で、このネタの尺としては良識的な範囲内でした。スタンダード・ラインと言ってもいいかと思います。
往年の六代目圓生、五代目志ん生、八代目正蔵の「3大文七」はいずれも40分から55分でした。いかに噺がドラマティックであっても、昔の江戸気質が基軸の美談であれば、折り目正しさを失ってはいけないと思うのです。
原作がドラマティックだから演者も車輪で熱演する――のでは自爆テロ同然です。70分超の「文七元結」で聴き手を虜にしたのは、ひとり古今亭志ん朝あるのみでした。
市馬さんの「文七元結」はバランスよく、丁寧で自然な人情味にあふれていました。今後さらに噺の真髄を穿ってくれることでしょう。とても楽しみです。
一朝さんの「七段目」と「文七元結」の間に喬太郎さんの「同棲したい」を挟んだのは邪道だ、と言われかねない手口なのでしょうが、企画者側とすれば百も承知で打ったささやかなバクチなのです。新作といってもウルトラマンの話ではなく、「同棲時代」がはやった昭和のあの頃にスポットを当てただけのことで、「文七元結」とは水と油の人間ストーリーではありませんから。
仲入り前、くいつき、(膝がわり)、トリというポジションの別をうまく活用すれば、目先の変化で結果よしということもあります。お客のアンケートでも批判はなく、全体の流れがよかったという感想ばかりでした。
今年を振り返ると、初夏の頃からチケット即日完売が続いています。落語ブームの手ごたえはたしかで、年明け以降もしばらくは落語の春が続くのではないでしょうか。
桂宮治「壺算」
三遊亭歌武蔵「禁酒番屋」
春風亭一朝「七段目」
柳家喬太郎「同棲したい」
「文七元結」は45分強で、このネタの尺としては良識的な範囲内でした。スタンダード・ラインと言ってもいいかと思います。
往年の六代目圓生、五代目志ん生、八代目正蔵の「3大文七」はいずれも40分から55分でした。いかに噺がドラマティックであっても、昔の江戸気質が基軸の美談であれば、折り目正しさを失ってはいけないと思うのです。
原作がドラマティックだから演者も車輪で熱演する――のでは自爆テロ同然です。70分超の「文七元結」で聴き手を虜にしたのは、ひとり古今亭志ん朝あるのみでした。
市馬さんの「文七元結」はバランスよく、丁寧で自然な人情味にあふれていました。今後さらに噺の真髄を穿ってくれることでしょう。とても楽しみです。
一朝さんの「七段目」と「文七元結」の間に喬太郎さんの「同棲したい」を挟んだのは邪道だ、と言われかねない手口なのでしょうが、企画者側とすれば百も承知で打ったささやかなバクチなのです。新作といってもウルトラマンの話ではなく、「同棲時代」がはやった昭和のあの頃にスポットを当てただけのことで、「文七元結」とは水と油の人間ストーリーではありませんから。
仲入り前、くいつき、(膝がわり)、トリというポジションの別をうまく活用すれば、目先の変化で結果よしということもあります。お客のアンケートでも批判はなく、全体の流れがよかったという感想ばかりでした。
今年を振り返ると、初夏の頃からチケット即日完売が続いています。落語ブームの手ごたえはたしかで、年明け以降もしばらくは落語の春が続くのではないでしょうか。
桂宮治「壺算」
三遊亭歌武蔵「禁酒番屋」
春風亭一朝「七段目」
柳家喬太郎「同棲したい」