ジャズメガネのセンチなジャズの旅
14.「デビュー/植松孝夫クインテット 」1970年録音
高校生の時に聞いた「ベルリン・ジャズ・フェスティバルの日野皓正」は衝撃的だった。特に植松孝夫のテナーが太い豪放なトーンでテーマを奏でる<オード・トゥ・ワークマン>には身震いがしたものだ。
そして、日野の突き刺さるようなトランペット、杉本喜代志の空間を切り刻むようなギターと並んで植松のジョー・ヘンターソンばりのテナーは当時のベルリンの聴衆をも魅了したのだ。なんだか誇らしく思えて、何度も聞いた。
植松孝夫のソロは想定外だ。理論に基づいて想定内のフレーズの組み立てはしない。あくまでもインスピレーションに基づいて魂を解放する。情報量の少なかった1970年代だからこそのオリジナリティなのだろう。
1970年のデビュー・アルバムでもすでにジョー・ヘンダーソンを想起させる演奏を繰り広げている。数年前、何度かライブで聴いたことがあったが、相変わらずのトーンは健在だった。また是非聞きに行きたい。
text & cut by Kozo Watanabe