ジャズメガネのセンチなジャズの旅
9.「流氷/日野元彦カルテット+1」1976年録音
スティーヴ・グロスマン。マイルスが「ジャック・ジョンソン」を出した時に初めて聞いた。日本盤が発売されたのが、1971年の7月頃。家にはまだ冷房なんてなくて、蒸し暑い部屋で聞くとそのサウンドがよけいに汗をふき出させた。マクラフリンのギター・リフを切り裂くマイルスのペットに続いて、なんとも湿度の高いソプラノ・サックスが聞こえてくる。コルトレーン・スタイルではあるけれど、どこかエキゾチックで粘っこいソプラノの音色とフレーズだった。
それ以来、グロスマンは大好きなサックス奏者の一人となったのだが、大学に入ると同じようにグロスマンの虜になっている仲間がたくさんいた。その仲間がこぞってやっていたのが、「ユニコーン」と「流氷」に入っている〈New Moon〉だ。1970年代の香りを漂わせるパワフルな曲。仲間たちはアイドルの追っかけをすることもなく、こういった曲に夢中になっていたのだ。遠い昔。。
text & cut by Kozo Watanabe