ジャズメガネのセンチなジャズの旅
8.「峰/峰厚介五重奏団」1970年録音
プーさんが好きだった。プーさんが弾く〈ダンシング・ミスト〉と〈イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー〉が大好きで高校時代に何度も聞いた。1972年には日比谷野音でプーさんのバンドも見たが、その時のフロントが峰厚介さんだった。キリストのような風貌で、鋭く、澄んだソプラノ・サックスとアルト・サックスを吹いていた。ナベサダを追う一番手と言われていたが、そのスタイルはパーカー系ではなく、コルトレーン的なアプローチで人気を集めていた。同世代のゲイリー・バーツと似た感じだった。幾何学的なフレーズが、プーさんの電気ピアノと絡んで、新しい流れのジャズの息吹きを感じたものだ。
そんな頃、1970年に峰さんはTBMにレーベル第一弾となるアルバム「峰」を吹き込んだ。その時には買ってはいない。ただ、変わったジャケットだなぁ、と思ったのを覚えている。峰さんは今や日本ジャズ界を代表する巨匠で、テナー奏者だが、当時は映画「ヘアピン・サーカス」にも出演したりして、1970年カルチャーの真ん中にいた人だ。ジャズが日本で若者に支持されたイカす時代。「峰」にも70年代の香りが詰め込まれている
text & cut by Kozo Watanabe