ジャズメガネのセンチなジャズの旅
7.「ミスティ/山本剛トリオ」1974年録音
TBMに最初にはまったのが、高校生の時。やはり、大友義雄さん、峰厚介さんたちのホーン奏者が活躍するアルバムやジョージ大塚グループの様なサムライ・ジャズ的なサウンドが自分の入門編でピアノ・トリオのLPまで手が届かなかった。だから、スリー・ブラインド・マイスの顔である山本剛さんの「ミスティ」を買ったのは発売からだいぶ経ってからのはずだ。どちらかというと、六本木、青山辺りでの活動の印象が強かったのも学生には縁遠かったのかもしれない。
だから、このアルバムを後になって聞いた時には驚いた。ウィントン・ケリーの「ケリー・アット・ミッドナイト」やレッド・ガーランドの「グルーヴィ」にも匹敵するようなブルージーで強力にスウィングするアルバムだったからだ。特にタイトル曲の「ミスティ」 の広いレンジで、しかも間引かれた音、録音の良さは、今、聴いても色褪せることはない。スウィンギーなテイクも世界水準のジャズだ。
この仕事に携わって、何回目かも分からない再発をCD、LP、そして海外での発売などで関わった。何度出しても売れるというスーパー・アルバム。今時、そんなアルバムはなかなか無い。
text & cut by Kozo Watanabe