ジャズメガネのセンチなジャズの旅

5. 「戸谷重子+今田勝トリオ」 1972年 録音
5. 「戸谷重子+今田勝トリオ」 1972年 録音

  中学生の時にサックスを始めて、ジャズ好きの兄の影響でジャズを聞くようになった。まずはサックス奏者のレコードから入門していたので、ジャズ・ヴォーカルを聞くのはずっと後の事になる。クリフォード・ブラウンの流れで聞いたサラ・ヴォーン、マル・ウォルドロンの流れで聞いた笠井紀美子などが自分で聞いたヴォーカルものの初期か。それらは非常にダンモな香りがして、お酒を飲むジャズ・クラブのヴォーカルとは違っていた。綺麗なお姉さまのレコードまで興味を持つ余裕はなかった。

  そんな高校生の時、当時のTBMの勢いに押されて買ってしまった戸谷重子。驚いた。全くジャジーじゃないんだ。真っ直ぐな声、ひねらない唱法。声楽の先生みたいな歌い方。しまった、と思いきや、今田勝の美しい伴奏による「キャント・ヘルプ・ラヴィン・ダット・マン」と「コール・ミー・イレスポンシブル」が妙に癖になって今でも愛聴盤なのだ。

不思議なものだね。

text & cut by Kozo Watanabe