ジャズメガネのセンチなジャズの旅

4.「エンカウンター/アラン・プラスキン」 1971年録音
4.「エンカウンター/アラン・プラスキン」 1971年録音

  9月に発売されるスリー・ブラインド・マイスのCD復刻ファイナル10タイトルの最後のアルバムはアラン・プラスキンの「エンカウンター」だ。このアルバム、ほとんど再発されたことがなく、今回やっと二度目の再発にこぎつけたのだけれど、実をいうとこのアラン・プラスキンというサックス奏者の名前が頭に刻まれたのは僕のジャズ人生のスタートの頃だったのだ。何という巡り合わせ。1971年、自分で買った二度目のスイングジャーナルの8月号。レコード・レヴューにベース奏者の金井英人の「Q」というアルバムが紹介されていて、なんとも不思議な雰囲気を漂わせていた。そのレヴューで峰厚介と並んでクレジットされていたのがアランなのだ。峰さんはすでにプーさんのバンドでスター・プレイヤーだったから、アランって誰だろう、プラスキンって響きがかっこいいや、と思っていた。もちろん、ジャズを聴きはじめたばかりの頃、名盤優先で聞くチャンスもないまま長い間が過た。


  中古レコードで「Q」と「エンカウンター」を手に入れたのはいつ頃だろう。「エンカウンター」には衝撃を受けた。オーネット・コールマンのように自由自在に、激しく吹くこの男は何者なのかとライナー・ノーツを読むとなんとベトナム戦争の1970 年前後に韓国に兵役で来ていた無名のアメリカ人だったのだ。これは、そのアランが休暇で来日した2週間の間に録音された奇跡のアルバムなのだ。

  ベースの金井英人さんが知り合いだったとのことだが、無名の22歳のアメリカ人のリーダー・アルバムを突然制作してしまう藤井プロデューサーの英断には驚く。まさにTBMマジック。アランはこの来日期間にPit Innで日野皓正グループに飛び入りしたという。その時にたまたまテープ・レコーダーに録音していたカセット・テープをDUGの中平さんがお持ちだという。是非、聞いてみたい。アラン・プラスキンという不思議な響きに魅せられて小説を書いたが、まだ陽の目はみていない。

text & cut by Kozo Watanabe