ジャズメガネのセンチなジャズの旅
2.「ブロー・アップ/鈴木勲」
静岡の冬は暖かいので、暖房器具があまりない。
僕の部屋なんかは小さな電気ストーブ一つだったので受験勉強佳境の1月の夜はかなり空気が冷えこんだものだ。
そんな頃、買った鈴木勲の「ブロー・アップ」。
B面の〈言い出しかねて〉でチェロをピチカートで弾く鈴木のテーマと菅野邦彦によるサビのエロール・ガーナー風のメロディがやけに深夜の冷たい部屋の空気に映えた。
ジャズには冷えた空気、あるいは蒸し暑い空気などにひどく溶け込む演奏がある。
A面1曲目〈アクア・マリーン〉も冷たい湖に浮かぶ泡のようにフェンダー・ローズの音が空気中に浮かんだり、消えたりする。
そんな研ぎ澄まされた音を聞いて、また教科書のページをめくっていた遠い日・・・
text & cut by Kozo Watanabe