ジャズメガネのセンチなジャズの旅
1.「男が女を愛する時/水橋孝カルテット」1974年
1974年高校3年の夏、夏期講習で東京の親戚の家に1か月居候していた。講義を終えて、新宿西口のオザワ・レコードをのぞき、新宿ピット・インに行くのが自分へのご褒美だった。
当時、渡辺貞夫を追うアルト・サックスの若手、大友義雄をフロントに据えたベースの水橋孝カルテットがとても気になって、ピット・インのある紀伊国屋裏に並んだ。
ピット・インはいつも盛況で夜のライブは早くから行列が出来たものだ。
蒸し暑い新宿の街角から店に入るとたばこの煙が混じった少し臭気のある冷房が心地良かった。
辛島文雄の瑞々しい切れの良いピアノ・タッチ。関根英雄のスピード感溢れるドラミング。フレッシュなカルテットで自分でもこんなカルテットを組めたら、と妄想したものだ。
東京の予備校の女子たちがまぶしかった噎せ返るような高校最後の夏。後に静岡のすみやで「男が女を愛する時」を買った。
全面グリーンのジャケットのジャジーさに心ときめいた。ライヴと変わらないヴィヴィッドなアルバム。
僕はその後、大友義雄さんの弟子になり、水橋孝さんとは一度だけだが共演させてもらうことになる。
text & cut by Kozo Watanabe