落語 みちの駅

第十五回 新春「落語研究会」収録
 2015年もまだふた月ばかりある。今年を総括するのはまだ早いのだが、大方の方向性はすでに見えているかと思う。

 だが個々の事情については、まだ何かあるかわからない。先日も八代目橘家圓蔵の訃報があった。

 それでも「新春番組」というものがあってテレビなどでは年明けに流す番組の制作が始まっている。収録からONAIRの間に何かが起きれば部分修正だのなんだのといろいろことが起きる。

 むろん「笑点」のような人気の定番番組は常に収録が先行しているので視聴者もかなりそれを心得て楽しんでいるだろうが、年に一度の正月番組となれば前年のうちに作って待機しているのかどうか、わからないまま見る人も多いのだろう。

 NHK総合テレビ恒例の正月の「寄席中継」だけはリアルタイムの番組だが、TBS「落語研究会」は地上波・BSともに一人前に?前年収録をしている。

 といっても、主体の落語そのものがすでに“先日の”口演だから、尾ヒレの部分がいつの収録だろうと、たいした問題ではない。

 2016年版の新春「落語研究会」のコメントのために少しずつ録画を見ている。ナマで聴き覚えの、また月例のこの番組でONAIR済みの口演もあるのでそうたくさん見なければならないわけでもないが、そんなことをしながら2015年を振り返ってみると派手に目立つことはなかったが、充実した口演の多い年だったと思う。

 その演者なりの芸の成熟、意欲的なネタへの取り組みが見られ、先への希望が感じられる年だった。

 今回の放映候補には2016年春の新真打もふくまれている。実現すれば喜ばしいことだ。新真打が登場するのは、決して“新春恒例”ではないからだ。

 1月1、2、3の三日間に3席ずつ計9席は聴き応えありだが、BSのみの番組だ。


著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。